Story 9 ページ9
少女の後についていけば、廊下に並ぶ二つの扉のうちの一つを開けて入っていく。Aは何度か入ったことがあるようで、一瞬止まりかけてまた歩を進める彼女はなにか思うところがあるのだろうか
その部屋の中には、ベットが置いてあった。そのベットは柵に囲まれているような、まるでそこで寝る患者を閉じ込める牢屋みたいにも見える異様なそれは、部屋の真ん中に一つだけポツンと置かれていた。
他には何も無い、それだけの部屋
それを見つめるダニーを見る顔は不機嫌そうな、そんな顔だ。
彼女はその部屋にあまり近寄らなかった。牢屋みたいで気味が悪い、ただそれだけの理由だ。
無造作に部屋の中を歩いていれば、壁に書かれた文字に自然と目が向く
そこには
【自分の望みを知っているか】
【欲望を知っているか】
【それが本能であるならば】
【抗う意味など無に等しい】
【何故ならそんな意味すら
ここにいる君は持たないのだから】
【ただし望みには対価がいる】
【ルールは破らぬように】
少女が読み上げたそれに
彼女は初めて内容を知った、とでも言いたげな表情をしている。自分では読むことの出来なかったそれに小さく溜息をついた。それは読むことが出来なかったことについてではない、
ルールという部分に関してだ
「ルール?」
「ここにはきっとルールがあるんだ。
例えば君達を襲った奴は、ここまで追いかけてこなかった。なにかしらのきまりがあるんだろうね 」
そのルールのせいで出れねぇんだよクソが、自分のフロアから軽い気持ちで出てみろ すぐ殺される。面倒臭いんだよ
二人の会話を聞く彼女は声には出さないが、そんな悪口と舌打ちが心の内で回っていた
「じゃあ、この望みって?」
「さぁ。それは人によって違うだろうからね。そうだな…僕なら………
__綺麗な目が欲しいな。僕片目が良くなくてね。色も嫌いなんだ
レイチェル、君のような目が僕のだったら、それはそれは素敵だろうね」
狂気が入り混じるその目にまた寒気を覚えたようで、腕をさすり目を背けたAの背をダニーは見つめていた。
本来の色のそれと、義眼の少し曇ったようなそれは
物欲しそうに彼女に向けられている
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