【d!】八尺の歩幅【企画短編集】 (ページ7)

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「…えっと、鳥居は潜るなって言われてて…」

あれからお礼を言ったのだが、彼の語彙は「ぽ」しかないらしく…
和服と『神』の紙もどきにしては、神様らしくないなと思う

緩く縛られた後ろの長い髪を揺らして、おいでおいでと手招きされるが…
そこはダメと言われている鳥居の中だ

？
「…ぽ、ぽ………」

「え、なにっ！？ちょっと！！」

？
「ぽ！」

戻って来たかと思えば、後退る私との距離をその長い足で詰めて抱き抱え…
そこまで来ればすぐ理解して

けども暴れるのも虚しく、鳥居の奥へと連れられてしまった
約束を守れなかった

社の階段部分に座らされ、その辺に落ちていた枝でガリガリと地面に文字を書き始める
その様子を見て、サッサと出てしまおうと立ち上がって、その場にくたりと座り込んでしまった

「え…」

？
「…ぽ！」

此方を見て、力なく座り込んだ私を社の階段部分に座り直させる彼は、目の前に人差し指を立て、見える口元を結び、頬を膨らませた
立つな、ということだろうか
けれどもそんなの困る

でももう一度立とうとしても、その場にへたれ込んでしまう

「なん、で…ｯ、」

これが、鳥居を潜るなという理由だったのだろうか
帰れない…

？
「ぽ…ぽぽ、ぽ」

困ったような、そんな雰囲気を晒した彼は私を抱き上げて
先ほど書いていた何かのところへ連れて行った

そこには…ちょっと古い日本語で、『しんぺい神』と書いてあった

「し、んぺい…しん？のかみ？がみ？」

目の前に一本指が立てられて、しんぺいしん、と読むことを知る
またガリガリと書き出す
…時間がかかる

「ぺ神」

しんぺい神
「ぽ！」

…あだ名まであったらしい
そして、片言みたいな文で色々教えてくれる
度々足で最初の文を消したりしながら…

要約してしまうと、ここはしんぺい神
通称？ぺ神の家で、彼はここに封印されている
そして、語彙はこれしかないらしい

ただ封印されている、という時点でやばいことはわかった
神様でもなんでもない
モノノ怪と呼ばれたそれであると、理解した