過去と、秘密と、闇と、光と。

＃２２ ページ25

彩ｓｉｄｅ

「あ、あのっ・・・！アーヤ！」


教室を出て、いきなり声を掛けられたものだから、つい、反射的に振り向いてしまった。



小塚くん！？・・・だよね？



「ちょっと話があるんだけど、いいかな？」


面影はあるものの、すっかり身長も伸び、声も少し低くなっている。


だが、彼の遠慮がちな聞き方や、その雰囲気はあの頃と全く変わっていない。



う・・・。
１番傷付けにくいなぁ・・・。


しかし、１度決めたこと。


私は精一杯の対応(うそ)を吐いた。


『えっと、、、どちら様ですか？』


「え・・・？」


案の定、いや、それ以上に小塚くんは固まっている。



・・・ごめんね。
今度こそ、小塚くんが私を忘れられるように、忘れたくなるように、精一杯、演じるから。


「え、あ、、あの、失礼ですが、立花彩さん、、、じゃありません、か・・・？」


小塚くんはギクシャクしながら問う。


『ごめんなさい。残念だけど、人違いです。』


本当は泣きたい気分だけど、本当に残念に思っているような微笑みを作る。


社交辞令の実践勉強で身に着けたものだ。


「そう、、、ですか。すみませんでした、お時間を取らせてしまって。」


『いえ、大丈夫です。それでは、失礼します。』



きっと小塚くんは気づいてる。
私の貼り付けた仮面(えがお)を。私の正体を。今私が吐いた、全ての嘘を。



どこまで知っているかは分からないが、これで良いんだと、自分に言い聞かせた。



これで、、、いつかの私のように、一緒にいたからというだけで、危険に晒されることはない。
これで、、、みんなは安全なんだ。平和に暮らせる。
これで、、、良かったんだ。

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