過去と、秘密と、闇と、光と。

＃０５ ページ8

彩ｓｉｄｅ

『ただいま。』


「「お帰りなさいませ、彩様。」」


数人のメイドさんと執事さんが声を揃えて迎えてくれる。


「彩様、本日は１時間後から例のお仕事です。お帰りのお時間にはお迎えに行きますので。」


『ありがと。』


それだけ言って、自室に向かい、服を着替える。



＿＿＿そういえば今日からだったな、あの仕事。



あの仕事というのは、桜宮財閥の頂点に立つ身として、


人の下で働く側の気持ちなどを知っておこうと、塾講師のバイトを始めたのだ。



ちなみに、その塾は「秀明」なんだ。
昔通ってたし、馴染みのある方が働きやすいかなって。



サイドと後れ毛を残して、お団子のアップヘアにする。


服は、シンプルな白のブラウスに、桜色の長めのフレアスカート。



＿＿＿うん、ちょっとは教師っぽくなったかな？
お化粧もちょっとだけしてみたし。



バッグに、授業内容をまとめたノートが入っているか確認し、


時計を見ると、ちょうどいい時間。


部屋を出れば、執事さんがそこにいた。


『車、出してもらってもいいかな。
・・・・できれば、普通のやつね、リムジンは目立つから。』


「かしこまりました。では、玄関でお待ち下さい。」


『ありがとう。』



飾ってある両親の写真に向かって、「行ってきます」と微笑む。


私に両親はいない。


正確に言えば、血の繋がった両親。


幼い頃に父が誰かに殺され、母はそのショックで病を患い、その１年後に亡くなった。


母曰く、父を殺したのは涼川って人らしい。


私は幼かったから、その涼川って人を覚えていない。



両親を失った私は、母と１番仲の良かった使用人の立花家に引き取られたんだ。
桜宮家に戻った今でも、たまに立花家に顔を出すの。
この間帰ったときなんて、奈子がIQ２６０の天才だなんて聞かされて、びっくりだったよ！



そんな事を考えていたら、乗っていた車が止まり、目的地についた。

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