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·若武side



「みんな...死んでしまった。身体も引きちぎられて、五体満足の人もいない。誰も......息をしていなかったッ......」




そう言って、嗚咽を漏らす女性に一気に力が抜けた。
ガクッと膝から崩れ落ちるのを黒木の腕が支えてくれる。


けれど、その黒木も顔は見たこともないくらい青ざめ、握り締めすぎた拳からは血が垂れていた。





「立花も...?立花、彩ももう......」





最後の足掻きのように上杉が震える声で尋ねると、周囲は黙った。


...沈黙は肯定


おいおい、嘘、だろ.....?
だって...だって、昨日も笑いあってたんだぜ?

ずっと.....一緒にいたんだぜ?




「...ううん。彩ちゃんは......彩ちゃんだけは、姿が見えなかった。」



「え...?」




全員死んだと言った女性を労わるようにしながらそう言ったおっさんの顔を見つめた。
おっさんは真っ直ぐに俺らを見つめ、口を開く。




「...確かに、祐樹くんたちの遺体はあった。だけど、彩ちゃんだけは見当たらなかったんだ。」




その言葉に真っ暗だった視界に一筋、光が射した気がした____




______




「...これ、本当に熊の仕業なのかよ。」




大人には止められたが、何か1つでも手がかりはないかと俺たちはその場に留まり、じっくりと部屋を探っていた。


既に遺体は埋葬されてはいるが確かにそこで惨いことが起きたという匂いや形跡は残っていた。
恐らく、一生残るだろう。



嗅覚の鋭い美門は辛そうに顔を歪めていたが、それでも部屋を出ようとする素振りは一切見せなかった。他の者も同様。俺も然り。



当たり前だろ。熊が襲ったとか何とか大人たちは言ってたけど、それだって全部推測だ。
証拠を見つけて、祐樹さんや、奈子ちゃんを襲ったやつ、ぶっ飛ばさねぇと気がすまない。



それに...アーヤのことも。


あいつは...絶対生きてる。
...絶対。



ギュッと拳を握り締め、思わず目の前にある赤い壁を睨みつけると、視界に七鬼の姿が入る。



...何してんだ、あいつ。



何やら妙な動きをする七鬼を思わず凝視したものの、すぐに目を逸らした。


あいつのことは気にしても、ムダだ。
あいつは昔から時々訳の分からない行動をする。

ほら、天然だから。




「...やっぱり、おかしいよ。」




じっと床にしゃがみこんだり、庭に出たりして何かを観察していた小塚がふと顔を上げ、呟いた。




「何がおかしいんだ?」



「...ないんだよ。足跡が。」





...足跡?





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Lua - とても面白いです!はやく続きが読みたいです! (2021年9月13日 7時) (レス) id: 7cef825e60 (このIDを非表示/違反報告)
ピュア - とても面白いです!続き待ってます (2021年1月24日 8時) (レス) id: 75738b8618 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 奏さん» ありがとうございます!!更新遅めですが頑張ります! (2020年11月15日 19時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
- とても面白いです。これからも更新頑張ってください。応援してます。 (2020年9月14日 17時) (レス) id: faad7bf9c4 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 紅楓さん» ありがとうございます!ちょこちょこ更新出来たらいいなと思っています。頑張ります!! (2020年8月30日 0時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セダム | 作成日時:2020年6月8日 23時

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