そのろく ページ7
まったく君はかわいい奴だなあ、としみじみと呟いたAは、あまりの羞恥に手で顔を覆った司の腰を掴んでベンチに座らせることにより逃走を阻止している。
さりげなく腕や袖ではなく腰に手を回しているあたり、さすがAだと類は勝手に感心した。
空いた方の手でそんな司の頭をわしわしと撫で回していたAは、ふとその手を止めて言った。
「そうだ、えむちゃんも私のことを名前で呼んでいることだし、君たちも私をAと呼んでくれて構わないよ。私はとっくに高校を卒業していることだしね」
その申し出に、依然表情の見えない司の肩が揺れる。
ずっと先輩と後輩の関係であったAとの距離を縮めるチャンス(笑)を逃す訳にはいかない。
あわよくば自分の名前も呼んでほしかったりもする。
そして、そんな司が声を出そうと息を吸ったのと、類が息を吐いたのは同時のことだった。
「ほぅ…。ではこれからAさんと呼ばせていただきますね。ついでに僕のことは類と呼んでください」
「……っな、」
抜 け 駆 け さ れ た !
類は非常にキレイな笑顔で爽やかに言ってのけた。
そんな類の思惑を察したAもにっこりと笑った。
司は類に抜け駆けされたことに軽いショックを受けた。
えむと寧々はAが持って来たたい焼きを頬張った。
好きな子には意地悪をしたい年頃の小学生のような笑顔を浮かべたAは、更に続ける。
「オーケー、類。…さすがに敬語までは無理かな?」
「……そうですね、敬語までなくしてしまうと、僕は誰かの恐ろしい嫉妬の視線に耐えられないので…ふふっ」
類は一瞬だけAの目よりやや右下に視線をズラすと、少し考え込むような仕草を見せ、これまた面白くてしょうがないと言わんばかりの輝かしい笑顔で言った。
「…あぁ、なるほど?それは残念だ」
類が言葉を濁した理由をなんとなく察したAは、Aの右に座っている司の頭をもう一度わしわしと撫でる。
楽しそうに撫でるAと、されるがままに髪を乱される司の様子は、さながら飼い犬とその主人のようだ。
犬種はゴールデンレトリバーあたりが妥当だろうか。
2つ目のたい焼きに手を伸ばしたえむの感想である。
ちなみに寧々は「砂糖吐きそう」という、よくわからないことを言いながらお茶を飲んでいる。
たい焼きが甘すぎたのだろうか。
さて、ここでようやく発言権が司に回ってきた。
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レイ - 文才ありすぎる…更新…まってます… (2022年4月28日 22時) (レス) @page12 id: af0b4e0d47 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーの - りつ@鉛筆 #アダマリLOVEさん» このネタ通じるかなァ〜??と思いながら書いていましたので笑っていただけて嬉しいです(笑)これが本当に運命なのかは神の味噌汁… (2021年8月16日 22時) (レス) id: 79598a89ca (このIDを非表示/違反報告)
りつ@鉛筆 #アダマリLOVE(プロフ) - 神の味噌汁好きです…w私の好きなゲームの曲で神のみぞ知るの所が神の味噌汁にしか聞こえない現象があるので謎の運命感じました笑更新頑張ってください! (2021年8月16日 18時) (レス) id: 938fdc03ed (このIDを非表示/違反報告)
にゃーの - いちごぱんけーき。さん» ひえー!遅レスに加えて更新止まってて申し訳ありゃーせん!これから更新再開しますよー!! (2021年8月12日 20時) (レス) id: 79598a89ca (このIDを非表示/違反報告)
いちごぱんけーき。(プロフ) - あっあっ…かっこいいおねいさんとかわいい司くん好きです…………更新楽しみにしてます…!!!!!! (2021年5月18日 20時) (レス) id: 889d4ea6fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃーの@ワンダショ推し | 作成日時:2021年3月26日 21時