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家に帰ってきてから、何時間たっただろう。
気づけば外が薄暗くなり始めていた。
「(帰って、くるよね・・・そりゃそうか。ここは水斗の家でもあるもんね。)」
優羽は水斗が帰ってくることを恐れていた。
あの時見た光景が頭を過って、自分を抑えられなくなるとわかっているからだ。
だが、その恐れもむなしく、水斗のことを考えてしまったがために、あの光景が頭に浮かんだ。
「(初めて見た。あんなことする水斗。それに、心なしか僕と居る時よりも楽しそうに笑っていた。)」
優羽の心に不安が広がる。
こんなに好きなのは自分だけなんじゃないか。
毎日幸せだと思っているのも、一緒にいられて嬉しいと思っているのも。
思えば、一緒に住もうと言ったのは優羽だった。
「(それでも、他人を家に上げたくない、他人の家に行きたくないって言ってた水斗がいいよって言ってくれたから、僕に対しては少しだけ潔癖がよくなったのかもって思ってたのに。)」
本当は嫌だったんじゃないか。
毎朝優羽の部屋に来て起こしてくれるのも、優羽が作るご飯を食べるのも、全部無理して我慢していたんじゃないか。
そんなことばかりが優羽の頭を支配する。
ポロッ・・・
気づけば、優羽の頬につぅッと一筋の涙が伝っていた。
それに気づいたら、もう止められなくなっていた。
「うっ・・・うぅ・・・、っみな、とぉ・・・っ、・・・。」
ボロボロと止め処なく溢れ出る涙が、優羽の頬を伝う。
いくら拭っても、次から次へと溢れる涙は止まらない。
「(どうしよう・・・水斗が帰ってくるまでには、止めなきゃいけないのに・・・。)」
水斗が自分以上にきつい我慢をしていたかもしれないと思うと、余計に悲しくなる。
優羽の我慢は、したくてもしない。
水斗の我慢は、したくないけどしなきゃいけない。
気を遣っていたつもりが、むしろ遣わせていたなんて。
「ごめん・・・ごめんね・・・・・・僕ばっかり・・・・・・。」
少しずつ止まりだした涙を懸命に拭う。
水斗が帰ってくるまでには止めなきゃいけない。
「(止めなきゃ・・・。)」
ガチャ
玄関のドアが開く音が、優羽の耳にはっきりと聞こえた。
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作者名:紅月 | 作成日時:2019年6月9日 10時