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第二波「心臓の音」 ページ3

「一人です。」
男性。瞑った目、だけどそれさえも美しいと感じる整った顔立ちにスタイルの良い体。白い髪に毛先は赤。え、DQN?と私の偏見にまみれた考えは置いておいて。
「いらっしゃいませ。カウンター席でよろしいでしょうか?」
オーナーはいつも通り客を優しく迎え入れる。素敵だわ。
だけど入口に立っている彼はその場から動こうとせず、少し困った顔で「すみません。」と言った。
「私、恥ずかしながら目が見えず…すみませんが席まで案内をしていただきたく…。」
盲目。付き人は居ない。自分を支える棒もない。凄いな、彼は一人で此処に来たのだろうか。
「そうですか。それは失礼。」
オーナーは彼の手を引き、ゆっくりと私の近くのカウンター席に座らせた。そして軽く感謝し、私と同じ珈琲を頼んだ。
「こんにちは。」
「…………。」
私の視線に気付いたのか知らないが私の方に体を向かせ、優しく声をかけてきた。だが、当然無視である。盲人であれ何であれ、私は他人と関わるのが苦手で苦手で仕方ないのだ。オーナーは別である。
何故苦手か?そんなの、面倒で仕方ないからである。ただそれだけ。私は今まで友人を作った事が無く、同性からは付き合いが悪いというしょうもない理由で嫌われていた。
「無視は悲しいですね…。」
「話がしたいのなら、他を当たれば良いのでは?私は一人が良いので。容易く話しかけられたら困ります。」
「中本さん。駄目だよ。すみませんお客様。この人は少々人付き合いが苦手でして…。」
「ほう、中本さん。」
彼は寧ろ嬉しそうに私の名前を聞いて微笑んだ。
「中本さん、聴き心地の良い声をしておりますね。是非下の名前も聞きたい。
嗚呼、後、別に貴女と話がしたくこの店に来たのではありません。ただ美味しそうな珈琲の匂いがしたもので。」
匂いだけでこの店に来たのだろうか。犬?
「…。」
「おや、困らせてしまいましたね。失敬。」
「お待たせしました。珈琲です。」
オーナーが淹れた珈琲を彼は「いただきます。」と言い一口飲んだ。
「…美味しい。素晴らしい腕前です。」
オーナーが褒められれば私も嬉しい。此処の珈琲の美味しさが分かれば良いのだ。それはそうと、まだ私から目線を外さない。目線、と言ったら変であろうが。
「…なんでしょう。」
「いやぁ、声だけではなく、素敵な心音だなと思いまして。」

心音。心臓の音。私の音。いきなりの発言に私は彼に恐怖した。
「ずっと聞いていたい。」

第三話「恐怖」→←第一話「刺客登場」



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 条野採菊   
作品ジャンル:恋愛
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肉塊(プロフ) - 冬斗さん» わーいありがとうございます〜もっと頭悪い小説にするので何卒〜 (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - そう言っていただいて嬉しいです…!作品いつも楽しく読ませて貰ってます! (2022年7月28日 10時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 冬斗さん» いや草。誤字の指摘、ありがとうございます。あと自信を持って下さい。何回も謝る様な事貴方様言ってませんよ( 'ч' ) (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - なってしまいます。うぅ…文章が長くなってしまいすいません…失礼しました… (2022年7月28日 9時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - すいません…自分なんかが初コメでおこがましいと思いますが、第四十七話の「再会」の最後の方で『あの時は彼が』の後が『鮭の飲み過ぎ』になっていました。恐らく『酒の飲み過ぎ』だと思います。このままでは夢主の中で、条野さんがしゃけを飲んで酔う人に (2022年7月28日 9時) (レス) @page49 id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:肉塊 | 作成日時:2021年9月24日 3時

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