カムイコタン ページ33
「おそらく白石はいまごろは旭川へ着いてしまっているだろう」
あれからしばらくして戻ってきた土方さんとキロランケのそばに、白石はいなかった。
奪還は上手くいかなかったようだ。
「アイツが勝手に脱出できたとしても、いつになるか分からないものを我々は待っているわけにもいかない」
土方さんの言う通りだ。
「そもそも脱出できるかどうか…脱獄王とはいえ監獄とは違うんだ。どんな扱いを受けているか」
「今この瞬間皮を剥がされているかも」
有り得なくもないからやめて欲しい。
永倉に続けた家永の不吉な言葉に私は心の中で返した。
「尾形見てこいよ。お前第七師団だろ？」
「……俺は今脱走兵扱いだ」
牛山に答える尾形。
「黒木は？」
杉本が私に聞いてくる。
「いや、実を言うと行けなくもないんだよな」
「え⁈ほんとに⁈」
杉本が声を上げる。
他の奴らも、希望を見つけたような顔をしていた。
「私は鶴見中尉に尾形の監視を命じられてここにいるんだ。尾形とは違って脱走してきたわけじゃない。でも実際は監視なんてしてないし、報告なんてするはずもない。そこを上手く言い訳出来れば行けないこともない」
そもそも鶴見中尉は私を逃がしたんだ。
私の電報がないからと言って本部にわざわざ何か言ったりはしないだろう。
「だが、そうすると今度は私が抜け出せなくなる。もうあんな機会、与えられることはないだろうからな」
軍にいる奴らを何人か殺していけば出られるかもしれないが、それはアシㇼパの意に反する。
「まあ、行けと言うなら行くぞ。アシㇼパの目的が果たせるのなら、私は構わん」
私が言い終わると、杉本は悩むことなく言う。
「いや、ここで黒木を犠牲にする選択肢はねえだろ」
「……じゃあどうすんだよ」
少し安心したのを悟られないよう、平常心を装う。
「キロランケは？元第七師団だろ？」
「俺はカムイコタンで顔を見られた」
正に八方塞がりか……。
全員の頭に白石の顔が思い浮かんでは消えていく。
そして、全員の気持ちはひとつになった。
まあ……いいか……
「あいつの刺青は写してるし」
牛山が言う。
だが、反対するものが一人だけいた。
「いや……俺は助けたい」
それは
——杉本だった。
こいつ……。
私は思わず口角が上がってしまう。
「なら私も。白石はこれから役に立ってくれるだろう。網走で白石は必要不可欠だ」
そう言った私は隣に立つ杉本と頷き合う。
「この詐欺師を使おう」
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123 - コメント失礼します！気になる方がいるかもしれないので、一応言っておきます。杉"本"ではなく杉"元"だと思います！ (3月8日 2時) (
レス) @page25 id: b93e4a83e3 (このIDを非表示/違反報告)
おほしさま - プスメラウィッチさん» ありがとうございます！続き更新しました！！毎日2.3話ずつを目安に書き進めていこうと思っています！もしかしたら一日空いてしまったりするかもしれませんが、できる限り毎日更新していこうと思いますので、覗きに来てくれると嬉しいです(*^^*) (2月16日 0時) (レス) id: 4b9eb9562c (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ(プロフ) - 続き楽しみに待ってます。 (2月15日 21時) (レス) id: b10205217f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おほしさま | 作成日時：2024年2月15日 0時
