変装 ページ30
「もうすぐ樺戸監獄が見えてくる。監獄から一番近い宿で落ち合う約束だ」
牛山が正面を指さしながら言った。
「しかし拍子抜けだぜ。網走の脱獄囚にもこんなザコがいたんだな」
尾形の言葉に、鈴川がふりむく。
「俺は詐欺師だ。頭を使う。暴力で人から何かを奪うような野蛮な脱獄囚と一緒にしないでもらいたいね」
「何威張ったこと言ってんだ。詐欺師だって人から何かを奪うだろ。お前だって他の奴らと変わんねえよ」
私が眉間にしわを寄せながら言うと、鈴川は何も反論できずに黙り込んでしまった。
「結婚詐欺だってな？相手の女もなんだってこんなしょぼくれた親父に騙されるかね。米軍の大佐とか、無理があるだろ。そんな嘘」
ヘラヘラと笑いながら放った言葉が、鈴川の気に触ったようで、真剣な声色で話し出す。
「変装は基本だ。この姿は本当の俺じゃない。本当の俺なんてないけどね。権威を利用するのも大切だな。米軍大佐とか、英国王室の血を引いてるとか。人は肩書きのある者の言うことを盲目的に信じがちだ。現にあんたは俺がアイヌの村長であることで、すっかり騙されたじゃないか。思い込みによって多少怪しいことがあっても都合よく解釈しただろ？」
それに、今度は杉本が言い返せなくなってしまった。
確かに鈴川の言う通りだった。
今回の件では私たちが少し特殊だったのですぐに見破ることが出来たが、普通の者ならば何の疑いも持たず信じ込み殺されていただろう。
アイヌではないのに、家に入れるときの作法はしっかりとしていたし、下手くそではあったがアイヌ特有のもてなしもあった。
この鈴川聖弘という男が、ただの結婚詐欺師ではないことは明らかだった。
殺さずにしておいて正解だったかもしれないな。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「悪い知らせがふたつある」
着いてそうそうなんなんだ。
ようやく宿につき、出てきた永倉新八から発せられたその言葉に、もはや驚きを通り越して呆れてしまう。
しかもふたつって……。
「ひとつは…熊岸長庵は死んだ」
「え⁈熊岸が死んだことなんで知ってる？」
「あ？」
……まあいいか。
新しい悪い知らせはひとつになったわけだし。
「それで…もうひとつの悪い知らせとは？」
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123 - コメント失礼します！気になる方がいるかもしれないので、一応言っておきます。杉"本"ではなく杉"元"だと思います！ (3月8日 2時) (
レス) @page25 id: b93e4a83e3 (このIDを非表示/違反報告)
おほしさま - プスメラウィッチさん» ありがとうございます！続き更新しました！！毎日2.3話ずつを目安に書き進めていこうと思っています！もしかしたら一日空いてしまったりするかもしれませんが、できる限り毎日更新していこうと思いますので、覗きに来てくれると嬉しいです(*^^*) (2月16日 0時) (レス) id: 4b9eb9562c (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ(プロフ) - 続き楽しみに待ってます。 (2月15日 21時) (レス) id: b10205217f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おほしさま | 作成日時：2024年2月15日 0時
