・ ページ29
「ここの村は男がいなくなったからずっとコタンに居ろと言ってる」
そう言ったアシㇼパの後ろでは女達が頬を赤らめながら「チンポセンセイ」と、牛山を呼んでいる。
「チンポ先生が大人気だ。熊に勝ったし、強い子供ができると言ってる」
アシㇼパの言葉に牛山が反応する。
ったく……。
「悪いが用事があるんでね」
「子種だけ置いていけないだろうか」
「むりむり」
私と杉本で牛山を引きずりながら歩く。
牛山の足が引きずられ出来た二本の線の間に、もう一本引きずられたあとが出来ている。
それが何によって出来たのかは……まあ…察してくれ。
「弱みに付け込むのは良くないぞ、牛山。責任取れるのか？」
杉本が言うと、アシㇼパは誇らしげに笑いながら告げる。
「弱くなんかない。アイヌの女だってしたたかなんだ。このコタンは必ず生き返る」
それを聞いた私は「ははっ」と笑い声をあげた。
「なんだかアシㇼパが言うと説得力があるなぁ」
「クロキ カッケマ！」
女達が、私を呼んだ。
何かと思い、振り向いた瞬間に、言葉をかけられる。
「イヤイライケレ！(ありがとう！)」
「……ッ！」
私は一度ほうけたあと、出てきた感情をそのままに表へ出した。
心からの笑いを浮かべ、私は女たちに言葉を返す。
「アリキキ！エチオカ アナクネ ユプケ！(頑張れ！あなた達は強い！)」
ふと、アシㇼパを見る。
その瞳と目が合った。
私たちは意味もなく微笑みあう。
なぜだか、とても心が満たされた。
「さあ、先を急ごう。白石もきっと杉本に会えなくて寂しがっている」
アシㇼパが言った。
白石、今頃泣いてないといいけどな。
牛山の叫びを響かせながら、私たちはコタンを後にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
123 - コメント失礼します！気になる方がいるかもしれないので、一応言っておきます。杉"本"ではなく杉"元"だと思います！ (3月8日 2時) (
レス) @page25 id: b93e4a83e3 (このIDを非表示/違反報告)
おほしさま - プスメラウィッチさん» ありがとうございます！続き更新しました！！毎日2.3話ずつを目安に書き進めていこうと思っています！もしかしたら一日空いてしまったりするかもしれませんが、できる限り毎日更新していこうと思いますので、覗きに来てくれると嬉しいです(*^^*) (2月16日 0時) (レス) id: 4b9eb9562c (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ(プロフ) - 続き楽しみに待ってます。 (2月15日 21時) (レス) id: b10205217f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おほしさま | 作成日時：2024年2月15日 0時
