・ ページ24
「でも今日は大事なお客さんだから一番粉を振る舞うそうだ」
アシㇼパの言葉を表すように、女たちはにこにこと笑みを浮かべながら食事の支度を始める。
「まずヨブスマソウの茎の中に澱粉汁を流し込む。それを表面が焦げるまで火に当てる。中の澱粉を蒸し焼きにしたクトゥマ(筒焼き)という団子だ」
アシㇼパの言葉に沿うように、あっという間に出来上がった。
ヨブスマソウの中から取り出されたクトゥマは半透明でぷるんとした見た目をしている。
「『くずきり』みたいだな」
「たしかに」
牛山の言葉に賛同する私に続け、杉本が「いただきます」としっかり言ってからそれを口に入れた。
尾形は何も言わずに食べ始めている。
「ヨブスマソウの香りがうつって甘くて美味い。ヒンナヒンナ」
アシㇼパが幸せそうに微笑みながら言った。
私も……。
ぱくりと口に放ったクトゥマはやはりぷるんとした食感で、ほんのり甘さがあり、とても美味しい。
「ヒンナ」
私も思わずアシㇼパのように呟いた。
「こっちは二番粉をフキの葉で包んで焼いたもの」
アシㇼパが指したそれはクトゥマよりも団子らしい見た目をしていた。
そしてそれは少しの湯気を発しており、それがより食欲をそそる。
「この赤いのはなに？」
杉本の言うように、何個かある団子のうちひとつに赤い液体がかけられていた。
「サクラマスのチポロ(筋子)を潰したものだ。ほかにもヒグマとかの脂を付けて食べたりする」
私は我慢できずに、誰よりも早く団子を手に取った。
杉本のようにしっかり「いただきます」と告げてから、それを一口かじりとる。
柔らかい食感と、団子の甘み。そして上にかけたタレのしょっぱさが見事に混ざり合う。
「ん〜〜〜〜っ！美味い！」
「うんうん♪団子の甘さに筋子ダレのしょっぱさがあいまってとぉ〜〜〜〜ってもヒンナ」
「嬢ちゃんは幸せそうに食べるなぁ」
牛山が言ったのが聞こえた。
ちなみに嬢ちゃんとは私のことだ。
いつの間にやら呼び方が嬢ちゃんで定着していた。
アシㇼパが『お嬢』で私が『嬢ちゃん』なのはどういうことなんだろうか？
そもそも嬢ちゃんって感じじゃないだろ、私。
まあ、別にいいが。
そして、私は何も返さない。
だって実際幸せだ。
幸せすぎて言葉が出ない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
123 - コメント失礼します！気になる方がいるかもしれないので、一応言っておきます。杉"本"ではなく杉"元"だと思います！ (3月8日 2時) (
レス) @page25 id: b93e4a83e3 (このIDを非表示/違反報告)
おほしさま - プスメラウィッチさん» ありがとうございます！続き更新しました！！毎日2.3話ずつを目安に書き進めていこうと思っています！もしかしたら一日空いてしまったりするかもしれませんが、できる限り毎日更新していこうと思いますので、覗きに来てくれると嬉しいです(*^^*) (2月16日 0時) (レス) id: 4b9eb9562c (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ(プロフ) - 続き楽しみに待ってます。 (2月15日 21時) (レス) id: b10205217f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おほしさま | 作成日時：2024年2月15日 0時
