耳長お化けがやって来る！ ページ14
「ムシオンカミはちょっと聞いたことがない。さっきの娘はこの辺りのコタンの子か？アイヌ語にも方言がある」
言い訳がましいなぁ。
「うんうん、確かに！ギョウジャニンニクだけでも『プクサ』とか『フラルイキナ』とか違う呼び方があるらしいからね。そうだったよね？黒木」
杉本が私に聞いてくる。
「たしかにそうだが、ムシオンカミに違う呼び方なんてないと思うぞ。言葉が違ったとして、それならなぜその女は私と同じように笑っていたんだ。それは言葉が伝わっていたからじゃないのか？」
「え？そういえば……」
杉本はエクロクに視線を向けた。
「モノアは少し離れた土地から来たんだ。だから伝わったのかもしれない」
その返しに、私は「チッ」と小さく舌打ちをする。
さっきから下手な言い訳しやがって……。
「あなたはアイヌ語を使えるのか」
「まあ、多少はな」
男の目がすっと細まる。
「一体何を疑ってるんだ、尾形だけじゃなく黒木まで！この人達に失礼なマネはゆるさんぞ！」
杉本が少し声を荒らげた。
だが、尾形はそれと反対に薄ら笑みを浮かべて静かに言う。
「こいつら本当にアイヌか？」
「だいたい、お前はあの小熊のオリを見て、何も違和感を感じなかったのかよ」
「ッ、それは……でもほら見ろ、この耳たぶ！アイヌは耳たぶが分厚いんだ、シンナキサラじゃない！」
「福耳にしか見えねえけどな」
杉本に尾形が返す。
うん、福耳だろ。それ。
「ウンカ オピウキ ヤン！」
「——ッ！」
窓の外から女が叫んだ言葉に、私は目を見開く。
後ろにふりむき、窓の外を見ると、今叫んだ女が他の男に口を押さえられ、連れていかれるのが見えた。
「今のご婦人はなんと？」
「知らない方がいい。和人を良く思わない者もいる。でも我々は歓迎するよ。今夜は酒でも飲んで…」
「ウンカ オピウキ ヤン！」
モノアが先程の女と同じことを叫ぶ。
——私たちを助けて！——
冷や汗をかいて、少し震えているその姿はなにかに怯えているようだった。
「出ていけ」
声を鋭くしたエクロクに従い、家を出ていこうとするモノアに私は声をかける。
男たちに分からないよう、アイヌ語で。
「ピリカ ワ。ヤクン ソモ エチオカイ オピウキ(大丈夫だ。もちろんあなたたちを助ける)」
モノアは私の言葉を聞き、目に涙をためて家から出ていった。
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123 - コメント失礼します！気になる方がいるかもしれないので、一応言っておきます。杉"本"ではなく杉"元"だと思います！ (3月8日 2時) (
レス) @page25 id: b93e4a83e3 (このIDを非表示/違反報告)
おほしさま - プスメラウィッチさん» ありがとうございます！続き更新しました！！毎日2.3話ずつを目安に書き進めていこうと思っています！もしかしたら一日空いてしまったりするかもしれませんが、できる限り毎日更新していこうと思いますので、覗きに来てくれると嬉しいです(*^^*) (2月16日 0時) (レス) id: 4b9eb9562c (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ(プロフ) - 続き楽しみに待ってます。 (2月15日 21時) (レス) id: b10205217f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おほしさま | 作成日時：2024年2月15日 0時
