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三人はこちらを見ながら、固まっている。
まさに放心状態だ。
「言ったろ？博文はある者に殺されたと。私が博文を殺したんだ」
アシㇼパの青い目に軽蔑の色が浮かぶ。
「私が師団で働く代わりに鶴見中尉と勝負の約束をした。私が鶴見中尉を殺せたなら私の勝ち。私が自分で自分を殺せたのなら鶴見中尉の勝ち。馬鹿げた話だが、私にはそれしかない。あの子の命を奪ったあの男を私はなんとしてでもこの手で殺す」
無意識に首元へと伸びた手は虚空をかき、ただ空気を握らしめる形になる。
首飾りを盗んだ尾形への怒りがつのり、歯を食いしばった。
「だから、お前達について行かせてくれ。頼む」
ようやく絞り出したような声で言う。
冷たい沈黙の帳が下りる。
その空間は、なんとも居心地が悪く、裁判で判決を下される罪人のような気持ちになった。
「私は」と、アシㇼパが声を発し、帳を破る。
「私は、殺さなくていいやつは殺したくない。無駄に殺し合うべきじゃない。……黒木は、ウェンカムイを知っているか？」
綺麗な青い目。私はその目を知っている。
知ってるはずなのに、知らない。
そんな気持ちの悪い矛盾が、私の頭を駆け巡る。
「……知ってる。人を殺した動物は、悪い神、ウェンカムイとなり地獄へ落ちる」
「人だって同じだ。人が人を殺せば、狂気に満ちたウェンカムイになる。地獄へ行きたいのか」
地獄…地獄だと？
「地獄がなんだ。今更清く生きたって、過去は変えられない。私が初めて殺したのは実の父親。戦争でも大勢殺した。私はもうウェンカムイに成り下がってる。私も罪の代償は幾らだって受けるつもりだ。あの男にも、罰は受けてもらわなければいけない。そして、それを与えるのは私だ」
真っ直ぐに、この子が綺麗だといった瞳で、貫いた。
「アシㇼパ。明るい朝だけ見たいのなら好きにしたらいい。だが、この戦場を歩くならば、それ相応の覚悟はしておいた方がいい。大勢死人が出るだろう。暗い夜を徊ったその先に、お前が望む朝はないかもしれない。戦争は、お前が考える程、甘くは無い」
ハッキリと告げると、アシㇼパの顔に、影が刺した。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
