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話半分で気楽に聞いていた白石が小さく「え」と驚きを口にした。
アシㇼパと杉本も少し驚いたような表情を一瞬浮かべた後、「どういうことだ？」とより詳しく話を聞き出そうとする。
「どういうもなにも、そのままの意味だよ。私は、軍を抜け出す機会を……いや、この言い方は正しくないか。私は、鶴見中尉を殺す機会を狙っていたんだ。この五年間、ずっとな」
説明を付け加えるが、言い方が悪かったのか、より混乱を招いてしまう。
「え？、え？どういうこと？分かってないの、俺だけ？」
自身を指差しながら、あたりを忙しなく見回す白石。
こいつの言動は見ていて飽きない。
「いや、俺にもさっぱりだぜ」
「鶴見中尉はお前の恩師じゃないのか？」
アシㇼパが発した『恩師』の言葉に、反吐が出る。
自身の感情が一気に高ぶっていくのを感じた。
「恩師？はっ！違うさ。その逆だ。あの男は私にとっての死神だ」
「死、神……」
そう呟く声が聞こえた気がした。
「そもそも、私が軍に入ること自体が、仕組まれたことだったんだ。鶴見中尉によって。鶴見中尉は私が女でありながら、幼い頃から博文に暴力を受けていたために高い身体能力を持っていることに目をつけ、それを欲した。博文は鶴見中尉の命令ならばなんでも聞く犬だった。鶴見中尉はそれを利用し、博文に私をより強靭な肉体にするよう命じ、育て上げた。新しい駒としてな。ある程度戦士として成長した私を向かい入れに家にやってきたとき、私は軍への入団を断った。そしたら、あの死神、どうしたと思う？」
眉間に皺を寄せながらも口角を上げている今の私の表情は、きっと歪なことだろう。
けれど、そんなことはどうだっていい。
あの日の出来事が頭の中で蘇っていき、あの男への憎しみを増幅させる。
「奪ったんだ。この世にあった私にとっての唯一の光を。私に希望を捨てさせ、第七師団へと引き入れようとしたんだよ」
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
