・ ページ42
「あッ！」
中から杉本の声が聞こえた。
「ッ、杉本！家永から目を離すな！」
ほんの少し間を置いて、中から聞こえてきた。
「黒木！白石！女将が逃げたぞ！」
「…アホ」
「えええ？」
私は思わず頭を抱えた。
「と、とにかく俺はキロちゃん起こしてくるから、黒木ちゃんは家永よろしくぅ！」
「……逃げたな」
とにかく家永を探さなければ。
白石とは反対の方向に向かい走り出すと
「出たーッ」
と叫び声が聞こえてきた。
「白石ッ！こっち来いッ！」
私の呼びかけに従い「ひぃ〜ッ」と情けない声を上げながら私の方へと駆けてくる。
ドコドコと、後ろからは破壊音が迫ってくる。
家永も、私たちと同じ方向へと走ってきていた。
……迎え撃つか。
帯革にある拳銃へ手をかけた時、白石が飛び出し、家長に向かい何かを投げる。
「来るな、変態医者」
家永に向かいそう告げると
「黒木ちゃん、急いでッ」
と私の手をひき走り出した。
「おい、お前何投げ……」
私が言い終わる前に、熱風と共に爆発音が鳴り響いた。
「……あー、手投げ弾か」
「当ったりー！」
得意げな顔で言う白石。
「ちゃんと残しておけよ。あとでキロランケに叱られても知らないからな」
言い終えると、私は身を翻す。
「えッ、黒木ちゃんどこ行くの？」
「アシㇼパを連れてくる。不敗の牛山もいるんだ。どれだけ被害が広がるかわからん。早めにあそこから連れ出さなければ」
「ちょ、俺を見捨てないでぇー！」
まるでこの世の終わりのような声を上げる白石。
「死ぬなよー、白石ー」
「まってぇー！」
さっき私を置いて逃げた罰だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
