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「たくさん血を失ったんだ。たくさん食べないとな」
私に向かう少女に惹き付けられ「あ、あぁ」と、生返事をすることしか出来なかった。
私を惹きつけたのは、その真っ直ぐな人間性か、綺麗に澄んだその瞳か。
「お、目ぇ覚めたのぉ？大丈夫ぅ？」
ムカつく口調と顔で私に労りの声をかけたのは白石由竹。
脱獄王の異名を持つ男だ。
「白石、手伝え。私も腹が減った。急いで夕飯の支度だ。杉本もだぞ」
「はぁい。アシㇼパさん」
なんだか一気に騒がしくなったな。
「お前、名前はなんて言うんだ？」
「黒木だ。黒木A」
「黒木か。良かったな。近くに仲間がいて。応急処置で止血がされてなければ死んでいたかもしれないぞ」
そういえば杉本も同じようなことを言っていた気がする。
「そいつに感謝するんだな」
「あぁ」
私に背を向けて調理を始めるアシㇼパたちを眺めながら物思いにふける。
アシㇼパにはああ言ったが、せっかくいい事しても、大切なもの盗んだら台無しだろ。
にしても助けないとか言っておきながら、私の止血をしたことといい、私の首飾りを取っていったことといい、本当に何を考えてるんだかわからん奴だ。
皮を剥がされ、赤い血肉の塊と化した兎だったものが、視界の中を揺れ動く。
皮を剥がれた獣を見る度、自分、黒木Aという人間が腐っていくような感覚がする。
そんな自分の心情の理由すら分からないのに、他人が何を考えているのかなど、到底分かるはずがなかった。
寂しくなった首元に手を当てる。
いつにも増して、心が虚しくなっているような気がした。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
