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「黒木ー？寝てんのか？」
戸を叩くと同時に杉本の声がうっすらと聞こえてきた。
眠気の抜けない私は布団に頭を入れて、声を遮断しようとする。
「黒木ー？」
その成果は全く見られず、杉本の声は容赦なく私の耳に届く。
「〜〜っ、くっそ」
布団から勢いよく起き上がり、足音を大きく鳴らしながら戸に近づく。
ドンッ！
「っるせぇな！あんだよ！」
音を鳴らして戸を開けると、そこには杉本の他にキロランケとアシㇼパの姿もあった。
「お前、絶対寝てただろ⁈ほんと、寝起き悪ぃな！」
「眠いもんは眠ぃんだから仕方ねぇだろ！」
杉本と私が言い争っていると
「二人ともうるさいぞ。他の客の迷惑だ」
とアシㇼパに言われてしまった。
自分たちよりもずっと年下のこの子にこんなことを言わせる己が情けなくなってしまう。
それは杉本も同じだったようで、私に向かい何か言ってくることは無かった。
「で、なんの用だよ」
「飯、食いに行こうと思って。行くだろ？」
「行くに決まっているだろう」
そういえば腹が減った。
「シンナキサラ」
「シンナキサラ」
「なに？」
私たちの後からやってきたスーツを着込み、額に四角いコブのある大男。
そいつに向けてアシㇼパとキロランケが言った。
耳？
私はその男の耳に目をやる。
ああ、なるほど。
「はっ、確かにこれは変な耳だな」
「それは柔道耳ってやつだ。あんた相当やってたね？俺は体質なのかそんな耳にはならなかったよ」
「ほう……心得があるのかね？」
二人は力強い握手を交わす。
次第に握手は柔道の組手へと変わった。
おいおい。
あれ？
大きな体格に杉本と互角、いやそれ以上の力を持つ柔道家。
どっかで聞いたような、見たような……
「このままでは殺し合いになる。こんなに強いやつは初めてだぜ。気に入った……奢ってやる！飲みに行こう」
……まあ、いいか。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
