殺人ホテル ページ35
「やっと着いた」
「誰のせいだよ」
「時間かかったな」
あっという間……
それは間違いだった。
途中で白石が迷子になり、何日か辺りを探していたら、なぜだか小樽まで戻っていやがって、一度引き返したのだ。
さすがに私もへとへとだ。
しばらくきちんとした睡眠をとれていない。
……寝たい。
だがそういう訳にもいかず、そのままキロランケの知り合いがいるという鉄砲店を訪れた。
「いつもは結構どこの宿も空いてるんだけどねえ？中島遊園地でちょっとした北海道物産の品評会だか博覧会だかで……」
杉本が店主に宿について聞いている間、私は置かれている銃を眺める。
と言っても、私はあまり銃、得意じゃないからなあ。
私は尾形とは違い、精密射撃は得意としない。
むしろ苦手だ。
だから私は杉本が持っているような三八式を所持していないのだ。
私が得意とするのは体術や剣術などの接近戦であり、あんな無駄にでかいものを持っていると動きずらいというのも理由の一つ。
さすがに戦場では肩にかけていたが、ほとんど使う機会はなかった。
私が今所持しているのは入隊した時に支給された拳銃が一丁のみだ。
「アシㇼパさんそんなの触っちゃダメだよッ」
並べられていたうちの一つを構えるアシㇼパに杉本が慌てて注意する。
「良いじゃないか、アシㇼパ。様になってるぞ。だが、アシㇼパは小柄だからこういう小銃の方が……」
私がアシㇼパに手渡そうとした小銃は杉本の手に包み込まれてしまう。
目の前にある顔を見て思わず
「うっ、」
と声が出た。
「やめて」
杉本の口からおぞましい声が吐き出された。
「わ、わかったよ！」
私はアシㇼパの後ろに隠れながら叫ぶ。
おっかねえなあ！もう！
「そうだ！近所に女将一人で管理してる洋風なホテルがあるんだわ。昔は老夫婦がやってたんだけど、いつの間にか別の女性に変わっててね。これがなんとも色っぽくて……みんな噂してるよ」
「なんて言うホテルだ⁈おしえてくれ！」
おいコラ、ハゲ。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
