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「てめぇらはアホか？いきなり手投げ弾なんて投げ込みやがって」
低めた声で言うと、キロランケが宥めるように言う。
「だから、あれは火薬を少なめに……」
だが、それは私の怒りを鎮めるどころか、増幅させた。
「火薬が調節してあったとしても、馬が興奮して起き上がったり暴れたりしたら、アシㇼパが落っこちちまうかもしれねぇじゃねえか。大体、音に敏感な動物のそばで爆弾を使うっつー発想自体論外なんだよ」
心底呆れたと、言わんばかりの口調で言ったあとも私は言葉を続けた。
「杉本も、興奮状態の馬をほったらかして、挙句近くにアシㇼパを置き去りだと？もし馬に蹴られてたらどうする？そんなことされたら、こんな小さな子供、すぐ死んじまうんだぞ？」
「っ、……すまん」
アシㇼパのことを言われては、何も言い返せないのだろう。
本当に申し訳なさそうに言う杉本。
「これからは目の前にある敵の前に、そばにいるやつを思って行動しろ。たとえそれが、人でなくてもだ。……いいな」
「「はい……」」
二人の返事を聞いたあと、出し切れなかった怒りを吐き出すように、大きくため息をついた。
昨日からため息ばかりだ。
「黒木ちゃん、予想はしてたけど、怒るととっても怖いね……」
「あ？こんなの怒ったうちにはいんねぇよ」
言いたいことはもっとあったが、相当我慢した。
「ごめんね、アシㇼパさん」
「気にするな」
「お前らも、脅かして悪かったな」
それに答えるように馬は顔をキロランケに近づけた。
杉本はアシㇼパへ、キロランケは農耕馬達へしっかり謝罪をする。
……まあ、今回は許してやるか。
「で、なんでキロランケはあんなもん持ってたんだ？」
私が質問をすると、回答者であるキロランケは馬に跨る。
「俺は工兵でね。二○三高地では即席の手投げ弾を大量に作ったり……ロシア軍の堡塁に地面を張って近づいて爆破したりしたもんさ」
「なるほど。頼もしい道連れが出来た」
たしかに、頼もしくはあるが……
これはますます油断出来ねぇな。
「先を急ぐぜ！ハイヤー！」
……道産子だとカッコがつかないな。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
