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「有り金と馬をいただく。そっちの兵隊さん、肩の銃を捨てな」
『出発そうそう山賊かよ』
と、思い切り顔に書いてある白石に、戦闘態勢にはいりつつある元軍人の二人。
アシㇼパはそこまで驚いた様子もない。
慣れているのかな。
「お前らにやれるような金はねぇし、この馬もやる気はねぇよ。とっとと失せろ。邪魔だ」
「大人しく言うことを聞いた方が身のためだぜ」
「大人しくは出来ねぇな」
キロランケの言葉と共に、ジュッと、何かが焼き付く音がした。
その何かを、キロランケは山賊の足元に投げる。
「あ？」
ころりと転がるそれを見て、正体がわかった。
「手投げ弾⁈」
「っ杉本下がれ！」
私は急いで叫び、自身が跨っていた馬を下がらせた。
爆発音とほぼ同時に「ヒヒィィン」と、馬の声が聞こえた。
間に合わなかったようだな。
キロランケは馬からおり、山賊の一人の元へ向かったが、私はその場に残り、興奮した馬たちを静める。
「大丈夫だ。大丈夫」
馬も徐々に落ち着きを取り戻してきた。
すると、そばにいたアシㇼパが声をかけてくる。
「すごいな。黒木。あんなに興奮していた馬を一瞬で」
「大したことない」
「いや、本当にすごいぞ。
……きっと黒木が動物を大切にしているから、思いが伝わるんだろうな」
「アシㇼパ……」
割と感動的な会話をしていたが、その間にも、山賊たちの悲鳴や
「白石のチンポよりも小さい刃物じゃ『日露帰り』は殺せねえぜ」
なんて杉本の恐ろしい言葉が聞こえてきていたので台無しだ。
振り返り様子を見てみると、杉本とキロランケがしきりに山賊を殴り、白石がそれを気まずそうに止めていた。
そいつらを木に縛り付けた後で、白石がこちらによってくる。
「やだねえ。戦争帰りは暴力的で」
だが、私は白石を無視し、杉本とキロランケの元へ向かった。
そこからは呑気な会話が聞こえてきた。
「随分と物騒なもの持ってるじゃねぇか。巻き添えは困るぞ」
「さっきのは火薬を少なめに調節してある」
そして……
バチン！
「痛ったー！」
「なんだ⁈」
二人の頭をぶっ叩いた。
「なんだじゃねぇ」
思い切り睨みあげると私の目付きに二人がびくりと震えた。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
