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「刺青を見てピンとくるものはないのか？アシㇼパちゃんにしかこの暗号は解けないってことなんだよな？」
白石に言われたアシㇼパは残念そうに俯きながら、小さく首を振った。
アシㇼパが小さくちじこまってるその姿は、勇敢なこの子の性格をよく知る者ならば、とても痛々しく感じてしまうだろう。
「もしそうだとしても全部集めないと解けないはずだ」
少し低めた落ち着いた声色で言った杉本も、アシㇼパを心配しているのか、纏う空気が暗い。
「囚人を探すより……何よりもまずのっぺらぼうに会って確かめたい。もし本当にのっぺらぼうが私の父親なら娘の私にだけは全てを話してくれるはずだ」
アシㇼパの眉間に浮かぶ少々のシワ。
辛そうにも見えるが、どこか決意の固まった表情にも見えた。
「北海道のどこかにいる凶悪な脱獄囚を全員探し出して捕まえるよりは楽かもな。少なくとものっぺらぼうの居場所ははっきりしてる」
「あのなぁ、はっきりしていると言ってもそこは天下の網走監獄。そう簡単な話じゃねぇぜ」
私はキロランケの言葉に呆れ声で返した。
すると横から
「その通り！」
と、白石が私に同調するこえがした。
「俺は日本中の監獄や集治監を脱獄してきたが、網走監獄はなかでもとびきり厳重だ。のっぺらぼうは足の腱を切られて満足に歩けなくされている上に、金塊を狙う看守から常に監視され、そして外では第七師団がつけ狙っているはずだ」
一拍おいて、もう一文。
「本人に会うなんてまず不可能だろうぜ」
「……」
その最後の一文で、アシㇼパはまた落ち込んだ表情に戻ってしまう。
「俺の協力無しではな」
私は白石のその言葉に顔を固まらせたあと、思わず「ふっ」と小さく笑い声を上げてしまった。
かっこつけめ……。
「脱糞……いや、脱獄王」
嬉しそうに頬を緩めたアシㇼパの顔からは先程までの弱々しさは感じられない。
「役立たずも、たまにはいい事するな」
私が白石に向けて小さくからかうように言う。
「まあ、俺だって金塊は欲しいしね。使えるものは使わせてもらうよ」
「そうかい」
私と白石がむけた視線の先にあったのは大切なものを優しく包み込むような視線を送り合う、不死身と一人の勇敢な少女の姿だった。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
