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「皮を付けたまま焼けば肉の旨味を逃がさない。塩焼きが簡単だしオススメだ。鮭は大きければ大きいほど美味い。イトウは鮭の仲間だからこのイトウの主も美味いはずだ」
塩焼きはあとにまわし、まずは刺身を堪能することになった。
「シャチの時に使った醤油が余ってるだろ」
「いただきまぁす」
「うんうん。確かに脂が多くて『川のトロ』だ」
「口の中でとろける」
「ヒンナ」
「鮭より臭みが少なくて上品な味だね」
各々の感想を述べ、今度は塩焼きの調理に入る。
「でっけー切り身だな」
「豪快な塩焼きだぜ」
「そろそろいい頃じゃないか？」
私がそう言うと、白石が「食べてみようぜ」と言ってアシㇼパ、杉本と一緒になってかじりついた。
いや、はやっ。
「めちゃくちゃ分厚い皮だけど、焼くと柔らかくなるな」
「香ばしくてとってもヒンナ。幻の巨大魚ヒンナだぜ」
それを聞き、益々食欲がそそられた私はキロランケと一緒に塩焼きにかじりついた。
「うん、美味い」
「目玉は茹でダコの味がして美味いぞ。みんな魚が取れたら一番にほじくってしゃぶる。子供のおやつとして奪い合うくらい大人気なんだ」
「しゃぶっていいぞ。杉本」
杉本に巨大な目玉を渡すアシㇼパ。
「おっきい」と言いながらも一生懸命にしゃぶる杉本。
……すごい絵面だな。
「杉本……」
キロランケが小さく呟いた。
「不死身の杉本か？」
「……なぜそれを？」
杉本の纏う空気が一気に変貌を遂げる。
「俺は第七師団だ」
なんだと？
杉本が密かに銃剣へと手を伸ばした。
それに気づいた白石は息を飲む。
「鶴見中尉の手下か？」
「違う」
杉本の問いを即座に否定する。
「鶴見中尉の元で私は長く働いていたんだ。白石を助けた時の身のこなし、相当戦闘に慣れてる。鶴見中尉の下にいたのなら名前は知らずとも顔くらいしれているはずだ」
「ああ。俺がいた小隊の中尉は別の人間だ。それに俺は除隊して村で生活しているから誰とも関わりは無い」
「確かに鶴見中尉の手下は百名ほどと言っていた。第七師団と言っても鶴見中尉の隊とは限らんか」
少し間を置いたあと、杉本は納得した様子で言った。
「名前と顔の傷でピンときた……不死身の杉元、こんなところで戦争の英雄に出会うとはな」
少し嬉しげな表情で言ったキロランケとは反対に、杉本は暗い顔と声で言う。
「英雄なもんか。俺は死に損なっただけだ」
死に損なった、か。
それではまるで死を望んでいるようじゃないか。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
