誰の行方ゴールデンカムイ夢小説弍 (ページ18)

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「チライ・アパッポ。私たちはイトウの花と呼んでいる」

　私に並んだアシㇼパが二人を見下ろすように言った。

「イトウって淡水魚の？」

「イトウは春になると現れる。この花が咲くのはイトウが川を上ってくる合図なんだ」

　アイヌは花も猟に使うのか。

「イトウって美味いのか？」

「マグロに似てるって話を聞いたぜ。なんとかとれないかな？」

私が言ったことで、白石も食べてみたくなったのかアシㇼパにそんなことを聞いた。

「カジカを捕った罠のラウォマプでもイトウは捕れるぞ。作るか？」

アシㇼパの顔が恐ろしいものに対し、怖気付くように変わった。

「でもどんなに大きなラウォマプでもイワン・オンネチェプ・カムイはとれないんだろうなあ。あな恐ろしや」

「なんだい？それは」

つられて顔を歪める杉本が言う。

「昔、猟師の追っていたヒグマが然別湖を泳いで逃げた。しばらくするとヒグマが水面から消えたので見に行くと巨大なイトウがいて、その口からヒグマの前足が覗いていた。そのイトウの大きさたるや二十五間(約四十五メートル)はあったという。イワン・オンネチェプ・カムイはイトウの主だ」

イワン・オンネチェプ・カムイ。

そんなに大きなイトウ、ほんとにいるんだろうか。

川の方を見た私は動きを止める。

そんな様子を不審に思ったのか、杉本が「どうした？」と声を掛けてきた。

「誰かいるぞ」