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「俺たちが持っている刺青は何人分だっけ？」
川を隔てる細い棒を渡りながら、白石が聞いてきた。
それに杉本が答えていく。
「酒で人生狂ったオッサン。第七師団に頭を撃ち抜かれたオッサン。最後の狼を追っていた猟師のオッサン。ニシン場にいた連続殺人鬼のオッサン」
……オッサンばっかだな。
「そして脱獄しては捕まるドジなオッサン」
「俺は脱獄王だッ！」
杉本のからかいに白石が受け答える。
仲良いねぇ。
「鶴見中尉が持ってるのは白石が見た一枚だけなのか？」
杉本が疑問形で言った。
誰に尋ねているのか、名前が入っていなければ、真っ直ぐ前を向き、ただただ歩いている。
だが恐らくこの中で唯一、鶴見中尉の情報を持つ私に聞いているのだろう。
「白石が見たのは津山の刺青か？」
杉本のといに答えるため、私も白石に問いを投げた。
「うん。確か黒木ちゃんとこの上等兵がとどめをさしたんでしょ。黒木ちゃんの知ってる人？」
「知ってるもなにも、仕留めたのは私だ」
『え"』
「うん？」
「黒木って上等兵だったのか」
驚いたように言う杉本。
え、
「言ってなかったか？」
「ねーよ」
下唇を突き出しながら杉本が言った。
ムカつく顔だな。
突き出た唇をつまみ上げてやると「痛てててて！」と声をあげた。
仕方ないので離してやると、患部を摩って「何すんだよ！」と怒っている。
「私が知っている限りでは鶴見中尉が持っているのはそれ一枚きりだ。だが、杉本の脱走を手伝ってから私に刺青の情報があまり回ってこなくなった。一、二枚増えていてもおかしくは無い」
気にせずに先程の問いに答えると、少々不満げな顔をしながらも杉本も気を取り直したようだ。
「土方が囚人を集めて仲間にしてるかもしれないんだよな？土方を見つけられたら一気に刺青が集まる可能性が高いな」
「それはどうかな。土方さんをあまり舐めない方がいい」
という言葉はすんでのところで飲み込んだ。
土方さんとの関係はまだ話していない。
変に疑われたら困る。
話せるほど深い繋がりがある訳でもないのだから別に隠すことは無い。
近いうちに面識があることは話しておこう。
「土方歳三か…どんな男なんだろう」
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
