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「それもそうだな。今のお前の状態じゃ」
髪を撫でつけるいつもの癖を見せつけながら、こちらに告げる。
「俺と一緒に来るなら助けてやるぜ」
「はっ、誰が」
私は、思わず乾いた笑い声をあげる。
「いいのか？」
「あ？」
尾形は少し間を開けて、自慢げに言う。
「俺は土方歳三の居場所を知ってる」
「っ、」
目を見開いた。
鏡で自分の事を見る必要などない。
きっと今の私は獲物を見つけた獣のような顔をしている。
今にも喰らいつかんとするような衝動が、私を突き抜け、傷の痛みを忘れた。
「お前、土方歳三に会いたいって言ってただろ。昔世話になったとか何とか」
私は気持ちを落ち着かせる。
少しづつまた、痛みが戻ってきた。
「それで、私がお前について行くとでも？」
「お前、そのままだと死ぬぜ」
尾形の顔はどこか勝ち誇ったように見えた。
「じょ、うだんじゃ、ない。わたしはこんなところでっ、くたばるほど、やわじゃない」
「……そうか」
先程まで浮かべていた笑みを消し去り、こちらに背を向け歩き出す。
「お、がた！」
私が声をあげると、戻っても、振り返りもしないものの、立ち止まってはくれた。
「勘違い、すんなよ。私はお前のことが嫌いっ、だから、断ってんじゃねぇ。私には私の目的があんだっ。土方さんには、必ず会う。この金塊争奪戦に関わっている限りっ、必ず。それは、お前も変わんねぇ。だが、次会った時は、敵対しているかもしれない。その時は、また、仲良く殺し合おうぜ」
私は皮肉に口角を上げる。
「はっ、だったらまず死なねぇ事だな」
そう言って、尾形はこちらに振り返らないまま、歩みを進めていった。
私の視界がぐるりと回った。
あ、やばい。
………次、会えるかな。
そんなことを思い浮かべながら、私の意識は暗闇へと落ちていった。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 2時
