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「宇佐美ぃ、いるかぁ？」
あの後、一度部屋へ戻り支度を整え、宇佐美の部屋へと直行した私はその戸に向かって声を上げた。
すると、ゆっくりと開いていくとの隙間から、声が聞こえてきた。
「もぉー、うるさいなぁ、なんだよ」
第一声それかよ。
「いや、お前も今日の仕事は終わったと聞いてな。一緒に銭湯行かないか？」
「銭湯ぉー？」
荷物を掲げて言うと、宇佐美があからさまに面倒臭そうな顔をして言った。
その態度にムカッときた私は、眉を寄せ、言う。
「行かないのなら行かないで別に良い。他の奴を誘うから」
「はぁ？今は百之助も居ないのに、僕以外誰を誘うって言うんだよ。今支度するから、ちょっと待ってろ」
失礼極まりない奴だな。
私だって一緒に銭湯行く仲間くらいいるぞ。
例えば……
やめよう。悲しくなる。
「はぁーー、極楽極楽」
やはり銭湯は良いな。疲れが取れる。
私は視線を下へ降ろす。
身長は平均より高めだが体つきはパッと見普通の女だ。
けれどしっかりと観察していくと、周りにいる女たちの体とは全くの別物であることに気付く。
筋肉が着いたからだも生傷の目立つ胴体も、剣だこの着いた手のひらも、心に宿す暗く濁った影も。
内から外に至るまで、全く全てが違うのだ。
普通の女になりたいとか言うことでは無い。
私は元の性格があれだ。
もし外見が普通の女であっても、今とさほど見え方は変わらないだろう。
どうでもいい。
背中を壁にくっつけ、上を向く。
顔にまとわりつく髪の毛がうざったかったので、前髪を右手でたくしあげる。
暖かいお湯が私の体を温めていく、
けれどもそれが私の体の中に通る冷たく冷えきった一本の芯まで達してくれることは無かった。
風呂から上がり、女湯の暖簾を潜ると私よりも早く出ていた宇佐美が椅子に腰掛けていた。
「遅い」
「悪かったな」
ぶつぶつと文句を言っている宇佐美。
面倒臭いな。
こんなことならもっと早く上がってくるんだった。
「悪かったって言ってんだろ？良いじゃねぇか。風呂気持ちよかっただろ？」
すると、宇佐美は口を止め、一瞬考えたあと、
「まあ、悪くなかった」
とかわいくないことをいう。
けれど、自然と笑いがこぼれた。
「そりゃあ良かった」
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
