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ある夜、海岸近くの倉庫へと第七師団所属の兵士たちが集められた。
私は鶴見中尉に連れられ月島と共に外へ出る。
するとそこには一人の外国人の男が立っていた。
確か名前はトーマスといったかな。
木箱の上には何丁かの銃が並べられている。
「随分古い銃だな」
「散弾銃なら半自動のが開発されたはずだ」
私のつぶやきに続け、月島が言った。
トーマスは微妙に口角を上げ答える。
「いい銃は高いネ。もっとお金必要デス。予算で数を揃えるならそれで我慢デス」
このおっさん、腹座ってやがる。
まあ、言っていることは間違っていないが。
「出世払いって日本語知ってるかい？トーマスさん」
「ワタシ色んな国から武器買って欲しい人に売るダケ。資産家じゃナイ。鶴見さんがゴールド見つける保証ないネ」
本当に、的を射た発言をするな。
「ヨーロッパ、いつ戦争が起こってもおかしく無いデス。大きな戦争にナル。日本はイギリスと同盟してマス。日本は遠いから戦わないかもだケド、同盟あるカラ協力しますネ。戦争は沢山ものが必要デス。日本の作る武器は質がいいデス。鶴見さんがゴールドで武器の工場作るなら急いだ方がいいヨ。私が買いつけて世界中に売るヨ」
長々話し続けるトーマスが、不気味に笑う。
「戦争は儲かりマス」
「……」
私は目を細め、トーマスをみる。
鶴見中尉に負けないくらいの悪人ズラだ。
……あんな地獄はもう御免だな。
「軍事政権を作り私が上に立って導くものとなる」
倉庫に戻った途端、兵士たちに向かい演説を始めた鶴見中尉を見上げる。
「お前たちは無能な上層部ではなく私の親衛隊になってもらう。金塊をただ分け合うのではダメだ。資金にして武器工場を作る。夕張の石炭、倶知安の鉄鉱石。高品質の武器を国内生産するための大きな拠点を資源豊富な北海道におく。父親をなくした子供たち、息子を亡くした親たち、夫を亡くした妻たちに…長期的に安定した仕事を与える。凍てつく大地を開墾し、日々の食料の確保すらままならない生活から…救い出す」
救う……ねぇ。
「それが死んでいった戦友たちへの、せめてもの餞である」
一体この話の何処までが本当なのか。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
