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森に食料を取りに行くと、一匹の犬に出会った。
小さな、銀と茶の毛色を持った犬。
私は、父と母の影響で人というものが大嫌いになっていた。
誰も信用出来なくなった。全ての人が、汚らわしく、醜いもののように思えた。
そのせいか、私は人に向けるべき愛情を動物にへと注いでいた。
私はなぜだか昔から動物に懐かれやすく、それも一つの原因だったのかもしれない。
犬は私の方へとゆっくりと歩み寄った。
私の目の前で座り、こちらをじっと見つめるその子がとても愛らしくて、自然と頬が緩んだ。
頭を撫でてやると、私の中に巡っていた黒く粘ついたものが剥がれ落ちていくように、気持ちが軽くなった。
私は犬にノチウと名を付け、共に暮らすようになった。
ノチウというのはアイヌ語で星。
暗闇をさまよっていた私を明るく照らしてくれた、この子にピッタリの名だと思った。
この子といると、孤独も怒りも恨みも、全部憑き物が剥がれ落ちるように消えていった。
昔、私には生きる意味が無いと言った時、『あの人』がかけてくれた言葉を思い出した。
『無いのなら見つければいい』
私はやっと、自身の生きる意味を見つけたのだ。
あの子の首につけた鈴がなる度に、心が休まり、満たされた。
人生で、初めて幸せというものを知った。
でも、幸せというのは長くは続かないものなのだ。
男が尋ねてきた。知らない男。
けれど、私はすぐにそれが誰なのか理解した。
男の隣で突っ立っている父の姿を見て。この男は恐らく、
「『鶴見篤四郎』だ」
プチンと幸せの糸の切れる音が何処かで鳴った気がした。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
