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近くにいた一等卒に話を聞くと、どうやらこの双子が勝手に杉本を捕らえた部屋へと忍び込み、拷 問しようとしたところ、返り討ちにされたそうだ。
全く、馬鹿な真似をするものだ。
私はコツコツと足音をたてながら、ほかの兵士に拘束されている二階堂兄弟の元へと歩み寄る。
「二階堂。私は昨日、二度もお前たちに『殺すな』と言った。お前たちの頭は飾りなのか？それがなんの役目も果たさないのなら、私が削り取ってやるぜ？」
双子のうち片方の胸ぐらを掴み、私は笑顔でその頭へと刃を向け、軍刀を構える。
「っ、」
二階堂兄弟だけではなく、周りにいる何人かの兵士たちまで息を飲む音が聞こえた。
掴んだ胸ぐらを離し、軍刀も収め、一歩後ろへと下がる。
「もう一度だけ言ってやる。不死身の杉元は殺すな。仏の顔も三度まで。次はないぞ」
「っ、は、い」
私は杉本へと近ずき、膝立ちになる。
「傷は平気か？」
「え、あ、あぁ」
「そうか。だが、一応治療はしておいた方がいいだろう。不死身だって死ぬ時は死ぬんだ。任せてもいいか？」
近くに立っていた一等卒に言うと「は、はい！」と怯えた様子で、治療道具を取りに行った。
……そんなに怖がることないじゃないか。
残った者に部屋に戻ることを伝え、私はその場を後にしようとする。
「あ、おい！」
「なんだ？」
だが、杉本に呼び止められた。
すると、
「ありがとう」
なんて、礼を言われたものだから、正直面を食らってしまった。
「まぁ、死なれても困るからな」
そう言って、私は今度こそ、その場を後にした。
あんな風に礼を言われたのなんて、いつぶりだろうか。
ふっと、思わず口元が緩んでしまう。
まだ出会って一日、きちんと話をしたのも、先程が初めてだ。
にも関わらず、
「随分と絆されたものだなぁ」
誰も居ない廊下で独りごちた言葉は、
北海道の冷たい空気に呑まれ、溶けて消えていった。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
