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「俺は第二師団だ。旅順には行ってない。やはり人違いみたいだな」
杉本の言葉を聞き終わると、鶴見中尉は残りの団子を一気に口へ入れた。
先程も思ったが、この男がとるひとつひとつの言動はどうしてこうも不気味なのだろうか。
「なぜ尾形上等兵が、不死身の杉元に接近したのか。それはお前が金塊のありかを示した刺青人皮を持っていたからだ……とここまで話が繋がることを恐れて我々から逃げようとした」
鶴見中尉が右の手を口元に当て、囁くように言った。
「刺青人皮を持っているのだろう？どこに隠した」
まるで悪魔の囁きだな。
「金塊？刺青？何を言ってるのかさっぱりだ。お前らの大将は、頭大丈夫なのか？」
杉本が嘲笑うように言った。
安心しろ。ここに居る殆どのものは頭がおかしい。
「脳が少し砲弾で吹き飛んでおる」
鶴見中尉がそう言うと、二人ではははと高らかに笑いだした。
だが、それも束の間。
ブスッ
鶴見中尉が食べ終えた団子の串を杉本の頬に貫通させたのだ。
しばし、その状態で二人は見つめ合う。
……この杉本という男、痛覚がないんじゃないか？不死身といわれるわけだ。
「大した男だ。瞬きひとつしておらん。やはり、お前は不死身の杉元だ」
鶴見中尉の顔から、あの胡散臭い笑みが消え去る。
そこには不気味な笑顔の悪人面すらも浮かんではいなかった。
何処までも続く闇を宿した瞳で杉本を捕らえるその姿は、狩るべき命を逃すまいという、死神そのものだった。
「だがな、不死身で寿命の蝋燭が消せぬと言うなら、
——俺がその蝋燭を頭からバリバリ齧って消してやる」
ガチガチと、上下の歯を噛み合わせ、音を鳴らす。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
