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「今日も冷えるなぁ、北海道は」
そう呑気に言葉を吐く鶴見中尉。
他の屯田兵たちも鶴見中尉の言葉に賛同する。
今日はそこまで寒くないと思うがな。
私の出身は北海道なので、他の県から来た鶴見中尉やこいつらよりかは、寒さに強かった。
「軍人さん！」
後ろから、少々慌てた様子の女が走って来て、私たちに声を掛けた。
「どうしました？ご婦人」
女の声掛けに最初に答えたのは鶴見中尉だった。
その顔面にはいつも通り、胡散臭い笑みが広がっている。
「この間言った、刺青の事を聞いて回っていた男が今、家の店でそば食べてるんだよ！」
……刺青。杉本か。
にしても、『この間言った』ということは前に少なくとも一度はここらで聞き込みを行ったということだ。
いつの間にそこまで手を回しているのか。
この男は底が知れん。
「これはこれは。有難い情報をありがとうございます。貴方の店まで案内して頂いても？」
ずいと、女に顔を近づけ鶴見中尉が言うと、女は頬を少し赤らめて「こ、こっちだよ」と案内を始めた。
こんな男に顔を近づけられたくらいで頬を染めるとは。私には理解し難い。
「行くぞ！金塊争奪戦の幕開けだ！」
鶴見中尉がこちらに振り返り、私たちに向かって喝を入れた。
「はい！」
皆が律儀に返事を返す中、私だけがじっと黙って、鶴見中尉の後ろを追っていった。
その後ろを着いてくる軍人のうち、そっくりな顔立ちをしている二人、二階堂洋平、浩平一等卒が
「そばいいなぁ」「いいね、そば」
なんてこの空気にそぐわない、呑気な会話をしているのを聴きながら。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
