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「こいつは殺さないのか」
「ん？あぁ、なにか新しい情報があるかもしれないからな」
尾形の質問に答えつつ、辺りを見回す。
「っ、おい、こいつ頼んだ」
「え、ちょ！」
「……」
私が向かった先は先程打たれた人々の元。
ではなく、流れ弾に心臓を撃ち抜かれた野良犬の元だった。
これは即死だな。
「……」
私はゆっくりとその子を抱き抱え、目立たない路地の間へと寝かせた。
脱力された冷たいからだに、毛を湿らせる赤い液体。
虚空を見つめる光の無い瞳。
その子の姿はいつかのあの子の姿に重なった。
頭を優しく撫でたあと、立ち上がり、スタスタと津山の元へ戻る。
そして私は——
スチャッ
「あっ！やっやめっ！」
スパッ
ベシャッ
津山の首を軍刀でかき切った。
血が溢れ出す首筋。
ごぽごぽと変な音をあげる口元。
そこまで深く刃を入れなかったので、死ぬまでには長く苦しむことになるだろう。
それでいい。これまで大勢殺したんだ。
これくらいは苦しんで死んで貰わないと。
「良かったの？情報がどうのとか言ってたくせに」
「気が変わった。それに情報ならこんな奴に聞かずとも、我らの情報将校様が手に入れてくれるだろ」
「そりゃ、そうだね」
「そう思うならなぜはじめから殺さなかった」
尾形がこちらに値踏みするような視線を向けてくる。
「……気分だよ」
私は尾形から目を逸らし、地面に転がる男を見る。
そこに出来ていく深紅の水溜まりを、冷たくなり目の焦点を失っていく死にかけの男を見ても、私にはなんの悲嘆の感情も湧いては来ない。
あった感情といえば、その首元から覗く、変わった刺青への興味だけだった。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
