夢に見た世界 (ページ48)

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私を見て！ページ48

「で、なんで僕を呼びだしたんだ？」

と、向かいで漫画家は嘆いた。

『わざわざすみません。岸部さんにお願いがあって』

人気の少ない路地裏で、極めて神妙な面持ちで私はこういった。

『実は、私を見てほしくて』

「は？」

鳩が豆鉄砲でも喰らったような顔だった。

「いや、そういうのってもっとこう、手順を踏んだうえで言うものじゃあないか？気持ちはありがたいが＿」

と、早口で淡々と喋っている。

『...何の話ですか？』

「何って、君が！」

『私は貴方のヘブンズ・ドアーで記憶を見てほしいって、その話をしているんですけど...なんだと思ったんですか？』

そう言って小首を傾げ、眉をひそめた。

彼は声にならない空気を吐いて、耳まで顔を赤くして焦っている。

喋ったり赤くなったり忙しない人だなぁ...

コホンと軽く咳ばらいをして、話題をリセットした。

『どうしても、思い出したい人がいて＿』

そうして、私は事の経緯を話した。

・

「記憶の中の弟ね」

『信じて貰えないのも無理はないと思います。でも、』

「まて、僕がいつ信じないと言った？ ...できることなら僕だって見たいさ」

『？』

できることなら？

その一言を怪訝に思う私に対して、あー...と複雑な表情を浮かべていた。

「その、実は...君のことは読んだことがあるんだよ」

『...え？』

記憶の中を探ってみてもこの人に私を読ませたことなんてない。

この前、絵本作家に会いに行ったときに...？とも思ったが、書き込める時間がギリギリで、私のことを読み切る時間は無かったし...

『もしかして、勝手に見た...ってことですか？』

「まあ、そうなる...おいなんだ"その人じゃあないぞこいつ"とでも言いたげな目は！」

いや、思うでしょうよ人じゃあないって...勝手に見といてこの野郎だな。

多少こみ上げる苛立ちを沈めるようにふぅーっと深い息を吐いて思考をリセットした。

『...いいです。この件は不問で。話を続けて頂けますか？』

少し冷めた目でそう告げた。