夢に見た世界 (ページ42)

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他人を知るより自分からページ42

＿やっぱり自分を知ることから始めた方がいいと思うんだよね。

そう書きなぐった紙をいきなり顔に張り付けてきた。

『どういうこと？』

無理に渡された紙を逆に押し付けて問い詰める。

＿だって、自分のこともわからないのに弟がどうとかって、そんなの無理に決まってるじゃん。

『自分のことなんだからわかんないわけないでしょ』

＿じゃあ今好きな食べ物１０コ言ってみてよ。

『そんなの簡単だよ......あれ？』

１０どころか１すら出てこない...

＿一度杜王町に戻ってみよ、ね？

(嫌だなぁ...)

＿言わなくても伝わってるよ。とにかく行こう！

と、手首をリボンで結んで私を引っ張る。

子供ほどの力しかないものの、固く結ばれたリボンが全く解けない...

無理に剝がそうとしたらリボンが破けて私の手まで弾け飛んでしまうだろう。

つまり私はついていくしかないのだ。

廊下ですれ違う人の目線が痛い...当たり前だ、だってあの人たちにとっては右手をあげて歩いている危ない人なんだから。

結局そのまま出口付近まで来てしまった。

「どこに行くんだ？」

と、後ろから声がする。

『承太郎さん！助けてください。この子離してくれなくて、杜王町に帰ろうなんて言うんです...』

藁にもすがる思いで懇願する。

すると彼は悩むでもなく、否定も肯定もせず、ただどこかしっくり来てないような顔をしていた。

「この子と言うのは、そのスタンドのことか？」

『そうです』

すると暫く思考してこういった。

「それは君のスタンドか？」

『？はい』

口元に手を当てて考え込んでいる。

『？？？』

「ああ、すまない。杜王町だったか、良ければ車を出すが」

『え？違います、杜王町に行きたいんじゃあなくて、むしろ逆なんです！無理やり連れて行こうとするこの子を止めてほしいんです！』

多分今まで話してきた中でも、一番語彙が強いと思う。

それくらい私は行きたくなかった。

しかし彼は私の期待を裏切ったのだ。

「良いんじゃあないか？なにかあれば帰って来てもらっても構わない。行ってみるくらいならだれにも会わないだろう」

いきなり後頭部を殴られたようなショックだった。

放心して暫く口もきけない。

そんな私を引っ張って、ワンスモアは駅に向かった。