夢に見た世界 (ページ30)

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この関連の話出すの勇気いるわページ30

『知ってるの？』

と、子供と話す私に勘弁してくれよと項垂れる岸部さん。

まあそんなの関係ないけどね。

「うん！このおかあさんがすき」

表紙の女の人を指さしながらそう言った。

『どうして？』

「だって優しいもん」

少年は声高らかにそう言い張った。

『...そっか。そう言えば、まだその服だと寒くない？』

子供は火の子と言うが、季節で言えばまだ冬である。

いくら何でも半袖短パンは寒くないか？

「え、うん。平気だよ」

ニコッと笑ってそう答える。

「...」

『両親は？』

「お父さんはおうちにいるよ、本屋さんなんだ！この本も僕が好きって言ったら一番前に置いてくれたんだよ！」

『そっか～、お父さん本読む？』

「あんまり、ていうか嫌いみたいだし」

この絵本も、お父さんは読んだことないみたいだな。

「でね、ぼくね、それ描いてる人と友達なんだ！凄いでしょ！」

『え？あったことあるの』

「うん、この近くに住んでるし。」

『そうなの？教えてくれない？』

「う、うん。良いけど」

と、詳しい道のりを子供ながらに教えてくれた。

『ありがとう...ねえ、やっぱり寒くない？』

「...うん」

『私の上着あげるよ、風邪ひいたら大変だしね』

と、子供の肩に上着をかけてあげた。

『お金とか気にしないで、結構安いやつだから』

「あ、ありがとう...ございます」

つたない敬語と共に頭を下げた。

『子供が大人に気なんて使わないの！』

と、優しく頬を撫で、顔を上げさせる。

子供はなにかを訴えようと口を開く。

「＿＿＿なんでもない」

少し辛そうな笑顔だけが目に焼き付いている。

・

『ねえ岸部さん』

道中私は口を開く。

「...さっきの子供の話か？」

『はい...ひどいことされてるのかな』

虐待を受けている子供は服を買ってもらえなかったりして一年中同じような服と言う事があるらしい。

それに両親のことを聞いたのに、喋ったのは父親のことだけ。

それだけでは決めつけられないにしても、気になることがある。

『この絵本のおかあさん、優しくなんかなかったですよね』

それこそ殴ったり蹴ったり、暴言を吐いたり、優しいとは遠くかけ離れているのだ。

『あの子はなんであんなこと言ったんでしょうか』

それも、この絵本の作者に会えばわかることなんだろうか。