あー！また病ませたな！ ページ23
更に次の日、リボンは。
部屋中に張り巡らされていた。
『どうしよう』
一人呟く。
声は震えていた。
廊下で足音が聞こえる、いつも起こしに来てくれてありがとう。
でもね、
『今日はちょっと嫌かも』
かすれる声は響かなかった。
＿扉が開けられるっ
みしっ、ぎしっ...
『あ』
張り巡らされたリボンのせいで、扉も固定されているのか。
「A」
コンコンとドアをノックしてきた。
『ご、ごめんなさい！ なんだか風邪っぽくて、うつしたら悪いから』
「なら、なおさら開けてくれ。心配だよ」
『大丈夫だよ、寝れば治るくらいのやつなの』
「本当かい？ それにしては声が震えているよ」
『本当に大丈夫。明日は一緒に食べれると思うから』
「わかった。ご飯は置いておくから、楽になってきたら食べるんだよ」
『うん、ありがと』
足音は遠ざかっていく。
『あ、ぁ...』
こわかった。
現実逃避するように布団に潜って、目を閉じている。
そうしていると睡魔がゆっくり私を侵食して、いつ間にか意識はぽつりと落ちてしまったみたいだ。
・
再び目を覚ましても状況は何も変わらなかった。
頑張ってリボンを回収し、引きずりながら歩く。
『あ、ご飯』
置いて行ってくれたご飯。
楽なように片手間で食べれるサンドイッチを置いておいてくれている。
一つ手に取って食べる。
『...おいし』
こんな時でもご飯はおいしい。
これを食べ終わったら電話しよう、メモはずっとポケットに入ったままだし。
固定電話に番号を入れて着信を待つ。
3コールもすると、彼は出てくれた。
『承太郎さん、わたしです。御星守です。その...』
事情を説明する。一つ一つ言葉を選んで。
「わかった。すぐに迎えに行く」
『はい...』
ぷつ、と電話が切れる。
迎え、てことは吉影に伝言とか残しておかなきゃ...！
なにかの裏紙と油性ペンを持ってくる。
『...かけない』
あの子にこれを言ったら心配させてしまうかも知れない。
それ以上に、面倒だって捨てられたらどうしよう。
『かけない』
床に油性ペンが落ちる。
その場にへたり込んでただボーっとしてた。
悲劇のヒロイン面で馬鹿みたい、もともとヒロインでもなんでもないのに。
路肩に車が止まって、チャイムが鳴った。
戸を開けて『行きましょう』と言う。
すこしにげさせてください。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むぎのくろた | 作成日時：2021年12月27日 2時
