夢に見た世界 (ページ3)

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平和な毎日ページ3

「もう朝だよ」

『ん...』

朝一番に聞こえてくる声は、いつもと変わらず心地よい。

『おはよう。朝が強いね』

「これでも、僕は社会人だからね。さぁ、顔を洗っておいで」

のそのそと布団から出て、洗面所に向かう。
鏡に映る自分の顔も、相変わらずという感じだった。

「『いただきます』」

二人で手を合わせて
食卓に並んでいる彩り鮮やかな朝食を口に運ぶ。

『美味しい、いつも通りの味で』

「オイオイ、それは一言余計じゃあないか？」

『そう？褒めたつもりなんだけど』

「...まあいいさ」

耳慣れた曲が流れ込んでくる。いつも聞いているラジオのオープニングだ。

『これ、耳にこびりつくな。つい口づさんじゃうよ』

ラジオに耳を傾ける私に対して、彼は私の手しか見ていなかった。

『...そんなに好きなの？』

「ああ！君ほど整った手の人はいないよ...朝から見れて幸せだなぁ」

幼馴染と言えど流石に理解しがたい。
褒められているんだから悪い気はしないが。

食べ終わった二人分の皿を洗う。後片付けは私の仕事だ。

「別に、後片付けも僕がやったっていいんだよ？君の手が水仕事で傷ついてしまったら僕は耐えられない」

スーツに着替えながらそう言う彼。真面目な顔をしてとんでもないことを言っている。

『ダメ、これは私の仕事なんだから奪わないで？君は社会人なんだから、早く準備しなさい』

不満あり気にそうかいと、ネクタイを締めながらぼやいていた。

『もう行っちゃうの？』

「すぐに帰るさ。...そんな可愛いこと言って」

そう言って私の手にそっと口づけをしてくれた。
赤くなった顔を見られたくなくて、思わず抱き着いてしまう。

『...お仕事、頑張ってね。吉影』

「ああ。君も、良い子にしてるんだよ。A」

優しく抱き返してきたあとで、彼はそのまま玄関から姿を消した。

これがいつも通りの私たち。いつもの幸せ。今までも変わらないし、これからも変わらないのだ。

『毎日平和だなぁ...』

手に残る熱を感じながらそんなことを思っていた。