婚約破棄 30日目。 ページ32
Aside
"…神崎家と婚約を結び直した方がいいんじゃないか。玲王のためにも。"
この言葉が頭の中をグルグル回る。
聞かなかったことにしたい。
全て忘れたい。
誰か、あれは空耳だったと、嘘だと言って。
頭を振っても、耳を塞いでも、消えてくれない。
嫌でも聞いてしまった声はリピートされ、心に大きな傷ができたように痛む。
たまたま聞いてしまった言葉だ、誰にも言えない。
聞いてしまったことを、傷ついている心を、隠さなければならない。
今は隠せる自信が無い。
でも、それは甘えだ。許されないことだ。
__せめて、このパーティーが終わるまで。
パーティーが終われば、落ち込んでも泣いてもいい。
((このパーティーで私は、北桜家の代表として出席してる。
…しっかりしなきゃ。))
やや強引だが気合いを入れ、少し震える足で確かな1歩を踏み出した。
____
_________
階段を上り、パーティー会場の近くまで来た時。
「A!」
後ろから私の名前が呼ばれた。
この声は玲王だ、と確信して振り向く。
『玲王。』
「よかった見つけられて。
会場にはいないし、携帯も見ねーし。
何かあったかと思った」
困り笑顔で、でもホッとしたような表情で言う玲王。
急いでドレスの内ポケットからスマホを取りだし、電源ボタンを押す。
そこには玲王からのLI○Eと電話が数件ずつ。文面から心配していたことが伝わる。
『ごめん玲王。本当にごめん。』
『いいよもう、見つけられたし。
でも、何かあったのか?
パーティー会場にもいなかったし、連絡つかなかったし。Aにしては珍しいな。』
疑問に思う玲王の目が探られてるような気がして、私は玲王から目をそらす。
『ああ、えっとね___
御手洗の帰りに見えた、庭園に心惹かれて。
家じゃ咲いてない花を見つけて愛でてたら、つい時間経ってたの。ごめんなさい。』
「…Aらしいな。
庭園って、一階から見えるあの場所か?」
『そうそう。玲王も見に行く?』
「おう。」
私達は一階へと隣に並んで歩き始めた。
((……ああ、よかった。))
___気づかれなくて。
安堵が罪悪感を緩和する。
思えば何度も、玲王に対してだけは気付かれないようにしてた。
何度も
…ただ、それだけだ。
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ゆりと白鳥(プロフ) - 咲夜さん、コメントありがとうございます!どうかこの作品を最後まで見守っていただけたら嬉しいです! (7月17日 20時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜(さくや)(プロフ) - 続き楽しみにしています。 (7月16日 20時) (レス) id: f2b60f62ba (このIDを非表示/違反報告)
ゆりと白鳥(プロフ) - 桜木清次さん、コメントありがとうございます!そしてあたたかいお言葉嬉しいです!どうかこれからもこの作品をよろしくお願い致します! (5月18日 8時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
桜木清次 - コメント失礼します!この作品とても好きです!!続きが気になりますが、無理のないペースで頑張って下さい! (2023年4月6日 20時) (レス) @page14 id: f838235576 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりと白鳥(プロフ) - かいさん、コメントありがとうございます!!終わった時も好きな作品だった、と言っていただけるよう頑張ります!これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2023年3月15日 21時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆりと白鳥 | 作成日時:2023年3月7日 12時