私と、婚約破棄してください。【御影玲王】

婚約破棄 28日目。 ページ30

Aside



ピアノを再び始めたあの日から、数日後。

上手くなりたくて、ピアノの練習は毎日欠かさなかった。





たまに時間を忘れて取り組んで、睡眠時間がいつもより少なくなることがあり、

玲王に"少し疲れが見える"と言われた時は、少しヒヤヒヤした。


玲王は少し体調に関しては過保護なところがある。









そしてたまに、学校で弾く。
それは主に凪のため。

ほんの少しの時間だけど、それは私にとって癒しの時間になっている。







「前に聞いた時よりもさらに上手になってる。すごいね。」





『ほんと？嬉しい。』





「…だけどA、疲れ、顔に出てるよ。」






『え、そんなに分かる？ピアノ夢中になって時間忘れちゃうんだよね。

玲王にも忙しいのか、って聞かれたし、気をつけなきゃ。』







「いやピアノもそうだけど…ってえ？忙しい？

…あと何か他に原因、聞かれなかった？」







『ん？それだけだよ？』







「ふーん…。」


少し面白くなさそうに返事をする凪。

私はそれに疑問を持つ。






『どうしたの凪。玲王となんかあった？』







「…んー、別に。



それよりA、ピアノのこと玲王にちゃんと内緒にしてくれてる？」







『あ、うん。凪が2人だけの秘密、って言ってたし。


…でも、なんで玲王に内緒なの？』





ここ数日、ずっと疑問だったことだ。
理由を考えたが、やはりよく分からなかった。








凪はんー、と考える素振りを見せて、しばらく部屋に静寂に包まれた。







そして凪は十数秒後、口を開いた。




「一つは、俺がしばらくはひとりでAのピアノ聴いてたいってこと。

玲王に教えたら絶対観客二人になっちゃうじゃん。

それに俺、Aのピアノ十年待ってたから、その特典ってことで許して。







あともう一つあるんだけど……






……それは、そのうち分かると思う。｣








そう言った凪の目は真剣で、その内容を聞けるような雰囲気ではなかった。







そっか、と言えばいつもの凪に戻り、

最初に弾いた曲をリクエストしてくれたので、私もピアノに意識を戻した。








＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿





俺がリクエストして弾いてくれてるその曲に癒されながら、Aの言葉を思い出す。







"あと何か忙しい以外に原因、聞かれなかった？"


"ん？それだけだよ？"







((…玲王は、外見的な(・・・・)疲れしか気付かなかったのか。



俺が少しルーズリーフで見えた分を足しても、心理的な(玲王の)悩みを持ってることくらい、顔に出てるのに。))






心の中のモヤが大きくなった気がした。




.

婚約破棄 29日目。→←婚約破棄 27日目。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す