婚約破棄 24日目。 ページ26
Aside
最近、玲王はサッカーにより一層力を入れている。
玲王にサッカーがあるように、私も何か夢中になれるものを探そうと思うようになった。
神崎家の事も気が紛れるような、そして玲王につり合う何かが欲しかった。
そつなくこなす程度ではなく、非の打ち所がないレベルの何かが。
((…現実はそう上手く見つからないなぁ。))
グラウンドでサッカーをする玲王を見ながら、密かにため息をつく日々だった。
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凪「ピアノは?」
『…ピアノ?』
凪に
"小さい頃私の得意だったことって、何だったっけ?"
と質問してみれば、予想外の答えが返ってきた。
「小さい頃の遊びは、俺はゲームでAはピアノだったじゃん。
俺、Aのピアノ好きだよ。」
『ピアノか…。』
確かに好きだった。
凪も、私のピアノが好きだと弾くたびに言ってくれていた。
「もう一回、考えてみてもいいんじゃない?ピアノののこと。」
凪はスマホの画面から目を離し、私を見た。
『…うん。ありがとう、凪。』
そう微笑めば、凪は少し笑ってくれた。
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放課後、音楽室に来た。
ピアノが気になってしょうがなかったからだ。
そっと鍵盤に指を置けば、懐かしい気持ちになった。
((……どうして私、ピアノ弾くことやめたんだっけ。))
好きだったけど弾かなくなった。
その理由は、またピアノが教えてくれるような気がした。
ピアノの椅子に座り、まだかすかに覚えていた曲を演奏する。
ピアノの音色が、この音楽室を包み込んだ。
そして私の中の記憶も蘇る。
((……ああ、思い出した。
私、辞めざるを得なかったんだ。
令嬢としての勉強と習い事、それに会社経営の勉強。それらが本格的になったから。))
集中するために、ピアノを弾かないように、自ら距離を置いていた。
でも今、私は確かな高揚感に包まれていた。
ピアノの鍵盤の感覚、ピアノの音、それら全てが好きだと再認識する。
((…なんだ、私、ピアノまだ好きじゃん。
忘れてはいなかったんだ。))
曲が終わって余韻が響いた。
その余韻が終わって、拍手の音が聞こえた。
振り向けば、凪がいた。
「やっぱり好きだよ。Aのピアノ。」
数々の思いが込み上げてきて、ありがとう、と言うのがやっとだった。
ピアノは好きという気持ちで続けたい。
つり合うための手段には使いたくない。
__この日からまた私はピアノを始めることにした。自分のため、そして凪のために。
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ゆりと白鳥(プロフ) - 咲夜さん、コメントありがとうございます!どうかこの作品を最後まで見守っていただけたら嬉しいです! (7月17日 20時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜(さくや)(プロフ) - 続き楽しみにしています。 (7月16日 20時) (レス) id: f2b60f62ba (このIDを非表示/違反報告)
ゆりと白鳥(プロフ) - 桜木清次さん、コメントありがとうございます!そしてあたたかいお言葉嬉しいです!どうかこれからもこの作品をよろしくお願い致します! (5月18日 8時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
桜木清次 - コメント失礼します!この作品とても好きです!!続きが気になりますが、無理のないペースで頑張って下さい! (2023年4月6日 20時) (レス) @page14 id: f838235576 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりと白鳥(プロフ) - かいさん、コメントありがとうございます!!終わった時も好きな作品だった、と言っていただけるよう頑張ります!これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2023年3月15日 21時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆりと白鳥 | 作成日時:2023年3月7日 12時