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婚約破棄 15日目。 ページ17

玲王side




正直言うと、抱きしめることは賭けだった。



それを本当にAに嫌がられたら、俺も婚約破棄を無理やりにでも受け入れよう。


そう思っていた。











Aから聞こえたのは、





『……れ、玲王?』




動揺したような声だけだった。
拒絶は、されなかった。








その事に少し期待してしまった自分がいたけど、

驚いて拒否できなかった、という可能性を考えてその気持ちを押し潰した。










そっと離れてAを見ると、目元には涙が浮かんでいた。













((……好きな奴を泣かせることしか出来ないのか、俺は。))











Aの涙の原因は、俺だ。
グッと心臓が掴まれたように痛くなる。












本当はそんな顔なんてさせたくない。


涙じゃなくて、笑っていて欲しい。


願わくば、俺がAを笑顔にしたい。
誰よりもAの笑顔が好きな、俺自身が。














「……こんな俺で、ごめん。














悲しませて、ごめん。
















……ごめんな。」







と言って、俺はハンカチで優しくAの涙を拭いた。















Aを見れば、Aは瞳を揺らして動揺していた。



…その瞳が、"苦しさ"と"好き"という感情を、俺に訴えかけてきていた。














俺の心臓が、ドクン、と大きな音を立てた。










もしかして、という期待が、収集もつかないほど膨らんだ。
















((……なぁ、もしかして、だけどさ。



Aはまだ、俺のことを嫌いじゃ、ない?
















……まだ、やり直せるって、信じていいか?))














"やり直したい"とか情けないにも程があるけど、Aに関することならもう、何でもいい。






情けなくても、かっこ悪くても、Aだけは失いたくない。


生涯でたった一人の、俺が心から愛する人だから。















___だから、進もう。



Aを失いたくないから。

ずっと隣にいてほしいから。












「……A。




もし、俺のことをまだ少しでも嫌いじゃないなら、


もし、もう一度チャンスをくれるなら、
















最初(・・)からもう一度、始めないか。



見つめ直したい。俺自身も、Aのことも。」










Aは目を丸くしたが、すぐに真剣な顔で俺を見た。












そして数秒の静寂の後、Aは口を開いた。















『……はい。』








Aの柔らかい笑顔は、無性に泣きたくなった。








.

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ゆりと白鳥(プロフ) - 咲夜さん、コメントありがとうございます!どうかこの作品を最後まで見守っていただけたら嬉しいです! (7月17日 20時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜(さくや)(プロフ) - 続き楽しみにしています。 (7月16日 20時) (レス) id: f2b60f62ba (このIDを非表示/違反報告)
ゆりと白鳥(プロフ) - 桜木清次さん、コメントありがとうございます!そしてあたたかいお言葉嬉しいです!どうかこれからもこの作品をよろしくお願い致します! (5月18日 8時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
桜木清次 - コメント失礼します!この作品とても好きです!!続きが気になりますが、無理のないペースで頑張って下さい! (2023年4月6日 20時) (レス) @page14 id: f838235576 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりと白鳥(プロフ) - かいさん、コメントありがとうございます!!終わった時も好きな作品だった、と言っていただけるよう頑張ります!これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2023年3月15日 21時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆりと白鳥 | 作成日時:2023年3月7日 12時

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