私と、婚約破棄してください。【御影玲王】

婚約破棄 14日目。 ページ16

Aside




泣いちゃダメだ、と必死で思っているのに、涙はおさまりそうな気配がない。




涙が溢れて、ﾂｰ…と一筋涙が頬をつたった時。












「……ｯｯ!!」











次の瞬間、ふわりと玲王の香りが鼻をかすめ、私の頭は玲王の胸にあって。



私の後頭部と背中にはぎゅっと力が込められている。








＿＿玲王に、抱きしめられていた。












それを理解するのに、数秒かかった。


玲王の体温と少し速い心臓の音が、これは現実だと教えてくれている。











『……れ、玲王？』








名前を呼べばほんの少しだけ腕の力が強まった。


玲王の心臓の音が少し速まったのが聞こえた。











「……俺は、あの頃(・・・)みたいに言葉で伝えるのは、今(・)は苦手、なんだ。

















……だからその分、行動で示したい。」









玲王はそっと離れて私を見ると、悲しそうな、そして苦しそうな瞳で私を見つめて
















「……こんな俺で、ごめん。














悲しませて、ごめん。
















……ごめんな。」







と言って、玲王はハンカチで優しく私の涙を拭いてくれた。















私の心臓が暴れまくって、音が鳴り止まない。





玲王の言葉と行動に、その表情に、とてつもなく動揺していた。














((……ねぇ玲王。








私、知らない。










こんな玲王の一面、知らない。













こんな表情も、こんな行動も、














全部全部、こんな玲王、見たことない。))














私は玲王と幼い頃からずっと一緒にいたのに。

ほぼ全て玲王の事を知っているのに。




ここには知らない玲王がいる。















((……私にも知らない玲王が、まだあるの？))











私達の何かが変わる、そんな気がした。








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