婚約破棄 13日目。 ページ15
Aside
紅茶が出来たため、玲王の前にティーカップを置いて紅茶を注いだ。
そして自分のティーカップにも注ぎ、ティーポットを置いて私も椅子へ腰かけた。
玲王はティーカップを口元に運んだ。
「…美味しい。」
少々驚いたような顔をして言ってくれた玲王。
これはお世辞ではなく、玲王の本心で言ってくれてると感じた。
『……良かった。』
内心ほっとして私も少し紅茶を飲んだ。
香りと味がいい感じに生かされていた。
「…紅茶入れるの上手いな。」
『……令嬢としての基礎中の基礎…だからね。』
紅茶を入れるのは、未来の旦那様の為に、という幼い頃の最初の方の花嫁修業だった。
"未来の旦那様"というまだ見ぬ存在に胸を高鳴らせていたあの頃の私は、今の私を見たらどう思うかと思わず苦笑する。
玲王はティーカップを置き
「…あのさ」
と緊張している雰囲気と真剣な瞳で私を見た。
『…うん』
私もティーカップを置いた。
始まるんだ、と察した。
「婚約破棄について、Aの両親はなんて言ってた?」
『二人でよく話し合いなさい…って。
……玲王のとこは?』
「俺のとこも、そう。
……なぁ、Aは本気で婚約破棄、したいか?」
『……うん。』
私は玲王の瞳を見て告げた。
その瞬間玲王の瞳が一瞬揺れて、泣きそうに見えた。
玲王はすぐに下を向いてしまったけど、見間違えではないはずだ。
私はひどく困惑した。
今までこんな彼を、泣きそうな彼を、見たことなんて無かったから。
『……玲王?』
「俺は…………
婚約破棄、したくない。」
私は数秒、呼吸を忘れた。
世界中の時間が止まった気がした。
私は驚きで何も言えなかった。
彼からそんな言葉を言われるなんて、1mmも想像をしたことがなかったから。
「俺は、Aのこと…………」
また玲王から告げられたその言葉に、今度は心臓が音を立てた。
その先の言葉を、少し期待している自分がいた。
好きだと、言ってくれるんじゃないか、って。
__でも、永遠と思えるほどの沈黙が続く。
時計の秒針が動く微かな音するだけ。
((……やっぱり、言っては、くれないか。))
涙が浮かんできて、零れ落ちないようにするのに必死に力を込めた。
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ゆりと白鳥(プロフ) - 咲夜さん、コメントありがとうございます!どうかこの作品を最後まで見守っていただけたら嬉しいです! (7月17日 20時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜(さくや)(プロフ) - 続き楽しみにしています。 (7月16日 20時) (レス) id: f2b60f62ba (このIDを非表示/違反報告)
ゆりと白鳥(プロフ) - 桜木清次さん、コメントありがとうございます!そしてあたたかいお言葉嬉しいです!どうかこれからもこの作品をよろしくお願い致します! (5月18日 8時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
桜木清次 - コメント失礼します!この作品とても好きです!!続きが気になりますが、無理のないペースで頑張って下さい! (2023年4月6日 20時) (レス) @page14 id: f838235576 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりと白鳥(プロフ) - かいさん、コメントありがとうございます!!終わった時も好きな作品だった、と言っていただけるよう頑張ります!これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2023年3月15日 21時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆりと白鳥 | 作成日時:2023年3月7日 12時