婚約破棄 10日目。 ページ12
Aside
___キーンコーンカーンコーン……
先生への挨拶も終わり、皆教室へ帰って行く。
柚「帰ろー」
『うん』
私も柚と一緒に教室へ帰ろうとした、その時。
___後ろから、名前を呼ばれた。
足がピタリと止まり、一瞬呼吸が止まった。
振り向かなくても、"彼"の声だとすぐに分かった。
間違ってるはずは無いけど、信じられない。
緊張しながらもゆっくりと振り向けば、
『…玲、王……。』
真っ直ぐな瞳で私を見ている玲王。
その表情は真剣そのものだった。
その瞳に私は吸い込まれそうになっている感じがして、体が一切動かせなかった。
私は何も言えず、かといって、逃げることも出来ない。
玲王はこっちに来て私の左肩に左手を置き、
私の耳元に顔を近づけ、
「……今日の会食で話したい事がある。
……逃げんなよ。」
とボソッと言い、私からゆっくりと離れ、凪の元へと走っていった。
私の心臓は暴れて、うるさく鳴り響いている。
耳元に玲王の低い声が残っている気がして、そっと耳を触る。
私の耳は、熱かった。
その様子を見ていた柚は駆け寄ってきて、
柚「御影……何て?」
と心配と緊張の入り交じった顔で聞いてきた。
『今日の会食……逃げんなよ、って……。』
私の声は酷く小さく、震えていた。
柚は驚いたように目を丸くしたが、すぐに笑って
柚「いい機会だよ。御影とちゃんと話してきな。
A自身が、後悔しないように。」
私自身が、後悔しないように。
柚のその言葉が、心に繰り返される。
『……うん。』
会食すると知ってからずっと、逃げたいと思ってた。
((でも、それじゃダメだ。))
玲王が話したい事がある、と言ってくれた。
何かしらを玲王なりに考えて、私と向き合ってくれてる。
"__逃げんなよ。"
その言葉が頭から離れない。
((……うん、そうだね。2人の言う通りだ。))
『……逃げないよ、私。』
自分からも、玲王からも。
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ゆりと白鳥(プロフ) - 咲夜さん、コメントありがとうございます!どうかこの作品を最後まで見守っていただけたら嬉しいです! (7月17日 20時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜(さくや)(プロフ) - 続き楽しみにしています。 (7月16日 20時) (レス) id: f2b60f62ba (このIDを非表示/違反報告)
ゆりと白鳥(プロフ) - 桜木清次さん、コメントありがとうございます!そしてあたたかいお言葉嬉しいです!どうかこれからもこの作品をよろしくお願い致します! (5月18日 8時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
桜木清次 - コメント失礼します!この作品とても好きです!!続きが気になりますが、無理のないペースで頑張って下さい! (2023年4月6日 20時) (レス) @page14 id: f838235576 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりと白鳥(プロフ) - かいさん、コメントありがとうございます!!終わった時も好きな作品だった、と言っていただけるよう頑張ります!これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2023年3月15日 21時) (レス) id: 828f7fac15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆりと白鳥 | 作成日時:2023年3月7日 12時