人も鬼も、みんな弱い。【鬼滅の刃】

ろく ページ9

何時間、眠りについただろう。久しぶりにぐっすり眠れた。


『行かなきゃ』

きっと、アオイが着替えさせてくれたのだろう。自分の彼岸花の着物ではなかった。


『出掛けてくるね』

し「……気づいていましたか」
『わかりやすくて』
し「明日、聞きたいことがあります」
『なんでもどーぞ(ﾆｺｯ』


『私はね、恩人には恩を返す主義なんだ(微笑』


し(いつの間、至近距離に!?)

し「……では、楽しみにしています」
『うん。散歩したら、帰ってくるね』


そう言って、夜に消える。

し「………本当に何者でしょうか」



昨日より、深い夜。月明かりもなく、暗い。


『むーざん』

無「小娘、待ちわびたぞ」
『寝ちゃってて…ごめん(苦笑』
無「くくっ、暢気な奴だな」


無惨の腕がAの心臓を貫く。


『……』
無「…お前、この程度だったのか」


彼はただ…低い、低い声で呆れていた。


『……ふふっ、あはははっ!!』
無「ーー!?」


彼女は笑い、無惨の目玉を抉る。音も無い、微かな風も無い。まるで、優しく触るように抉る。


『わざわざ捕まりに来て、馬鹿だなぁ(嘲笑』
無「っーー…(汗」


手についた、無惨の血を舐める。


『……ふーん、これが鬼を造る血液か』
無「…自ら鬼になろうとするのか？馬鹿な人間め」
『残念、私は鬼になれないんだ』
無「___!?(驚」


『…貴方の血液を、丸々頂かないと。鬼になれる気がしないよ』

無(いつの間にっ…!?)


無惨を優しく抱き締める。そう、彼女は無惨の速さを遥かに上回った。


『ねぇ、考えてくれたかな？』
無「くくっ…あはははっ!!」
『……ぇ、怖い』

無「……実に興味が湧く人間だな!!良いだろう、お前を“上弦の要”として迎えよう!!」
『…上弦の要？』

無「…生憎、十二鬼月は既に完成している。だから、お前には特別枠をやろう」
『わーい』


無惨が優しく、まるで最愛の存在に贈る眼差しでAを見つめた。


無「…お前、名は？」
『……天使A』
無「…そうか。天使、か…(ｸｽｯ」


無「……お前には悪魔のほうが似合っている(微笑」


『あははっ、最高の皮肉をありがとう(笑』


無「…A。上弦の要…私の“要”。さらに、残酷に。さらに、気高く。人を“喰ってくれ”」
『…まぁ、物理的には無理だけどね』


例えるなら、それは闇。なんの灯火も無い、暗く寒い…孤独な悪。

今宵、鬼でも人でもない…“上弦の要”が誕生する。

なな→←ごお

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