CACAO

23. ページ23

.



それからしばらく経って、上司に呼び出され正式に転勤が決まったと伝えられた。


前もって聞かされていたせいか意外にすんなり受け入れられて、早速仕事の引き継ぎの話を進め始めていたけど、シゲくんのことが何度も頭をよぎる。


あんな素敵なお隣さん、後にも先にもいないだろうな。

でも、うっかり告っとかなくて正解だったかも。
もし付き合えたとして、付き合い出した途端に遠距離恋愛になるなんて笑えない。

うん、そうだよ。
そもそも何も始まってなかったんだもんね。

何も気にする事はない。


そう自分に言い聞かせていたのに、昼休みに来たシゲくんからのLINEで私の気持ちは簡単に揺らぐ。



シゲ桜、だいぶ咲いたね。今週末あたり行こうよ、花見。


近くの公園の桜の写真も添付されていた。


ほんとだ。
いつの間にか、随分咲いてる。

じゃあきっと週末にはあそこの桜も見頃だね。
週間予報もずーっと雨が降る気配はない。


さすがシゲくん。タイミングばっちりだよ。

引っ越すんだって言ったら、シゲくんびっくりするかな。






結局、前もって何も伝えないまま、土曜日の朝迎えた。


「おはよ。じゃあ行こうか」

約束通り作ってくれたお弁当を抱えたシゲくんの後に続いて駐車場へ向かう。


「Aちゃん、今日は一日時間大丈夫？」

『うん。今日も明日も予定は無いよ』


仕事の引き継ぎは終えていて、来週はほとんど出勤せずに新居の下見と引っ越しの準備をすることになっていた。

だから今日は時間はを気にせずシゲくんとのお花見を楽しもうって決めていた。


そして、今日ちゃんと伝えよう。

一週間後に引っ越すって。



「そっか。それならよかった。じゃあ少し遅くなっても平気かな」

シゲくんは満足そうに頷いて運転席に乗り込んだ。

24.→←22.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す