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「じゃあ、また明日。お疲れした」


「もう部屋戻るの?晩メシは?」

「18時以降は極力食べないようにしてんのよ。さっきロケ中に結構食ったし」


もちろんそんな食生活は送ってないけど、とにかくスタッフ達と早く離れたくて、ホテルに帰るなり自分の部屋に戻った。




既に登録済みの番号に掛けると、すぐに出てくれた。


「今ホテルに戻って…この後会える?」

昨夜の電話で約束は取り付けてあったけど、一応再確認。


『もちろん』

快い返事が返ってきた。


「シャワー浴びて準備したらすぐ行くから…」

『ホテルまで迎えに行きましょうか』

「いや…」


ホテル前での待ち合わせは、スタッフに見つかるリスクが高すぎた。

かと言って全く土地勘がない場所だから、どうするのがベストなのかわかんないけど。


『じゃあ、地図を送るからそこで待ち合わせしましょうか。そこから徒歩で5分もかからないとこだから…』

事情を察したAさんはそう言って、電話を切るとすぐにスマホに地図が送られてきた。


ほんと、すぐ近くだ。


今すぐ行きたいとこだけど、外ロケで身体を張ってきた今の俺はまあまあ汚い。

ひとまずシャワーを浴びて、手早く髪を乾かして綺麗な服に着替えた。





そっとドアを開けて、廊下に誰もいないのを確認するとダッシュでエレベーターホールに向かう。

エレベーターがこの階に到着するまでがすごく長く感じて、俺にしてはわりと緊張した。


無事、誰にも会うことなくエレベーターに乗り込むと笑いが込み上げてきた。

何やってんの、俺。
修学旅行の中学生か。









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指定された何の施設かよく分からない大きな建物の前には、既にAさんの車が停まっていた。


『お疲れ様。ご飯まだならどこかに食べに行きましょうか』


車を走らせる昨日と違うAさんに、少し戸惑った。

女の人って、髪下ろしただけでなんでここまで雰囲気変わんのかな。



『なんだか、昨日とはまた違う感じだね。手越くん』

「え?俺?」


まさか、思っていたことを逆に言われてしまうとは。


『なんか、髪。セットしてないから、かな。
昨日よりふわってなってる』

「風呂入ってきたから。
仕事の時以外ワックスとか付けねーし」


『確かに、シャンプーのいい匂いがするかも…』


そう言うAさんこそ、いい匂いだし。





昨日とは比べ物にならないくらい、俺はAさんを意識しまくって、全く落ち着かなくなっていた。

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作者名:まり | 作成日時:2019年10月15日 1時

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