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翌日。
仕事に行くというAと一緒に家を出て、俺は1人で街を散策した。
15時に仕事が終わるという予告通り、時間ぴったりにAから電話が来て、既に会社の前で待ってることを伝えると、程なくしてAが会社の入るビルから小走りで出てきた。
早退でもしたのかと思ったら、これが定時らしい。
やっぱ日本人て働き過ぎなんだな。
今日の夜は外食する事になっていた。
まだ早いからと、カフェに立ち寄る。
『サッカーの試合あるのかな』
時間が経つに連れて、ユニフォーム姿の客が増え始めた。
『あー、やっぱりあるんだね。
…ねぇ、見に行く?』
Aはスマホで何か検索して、不意にそんなことを聞いてきた。
「え?
いや、いいよ。大丈夫大丈夫」
初めて会った時、サッカー興味ないって言ってたもんね。
無理に付き合ってもらうのも嫌だし。
そう言えば、一緒にどう?って誘って、断られちゃったんだっけ。
『今度は私が断られちゃった…
最近は、少し観るようになったんだよ?サッカー』
「そうなの?」
『うん。完全に祐也の影響だけど。
初めて出会ったのは祐也がスタジアム探してた時だったし。なんか気になってきちゃって』
「なにそれ。可愛いんだけど」
急遽予定変更。
平日ということもあり、チケットは当日でも余裕がありそうだったので、サッカー観戦に行くことになった。
無事、応援していたホームチームの勝利に終わり、Aも嬉しそうだったし、俺もめちゃくちゃ楽しかった。
当初行くはずだったレストランではなく、スタジアム近くのファストフード店でハンバーガーを食べて、前にも来たAのマンション近くのバーに立ち寄った。
Aは店に入るなり、店員と少し言葉を交わす。
前にもこんなことあったような…
『お友達また遊びに来たの?って聞かれたから、恋人よって言っといた』
そうだそうだ。
こないだは弟かって聞かれて、友達って言ったんだったな。
まもなく、まだ頼んでもいないのにビール2杯とソーセージのセットが運ばれてきた。
『恋人になったお祝いだって』
「マジか」
随分太っ腹なサービスを有難く受け取った。
少しして、Aのスマホが鳴った。
『ちょっと出てくるね』
「うん。いってらっしゃい」
『もしもし。…お久しぶりです』
あれ?日本語?
なんとなく気にしつつ待っていると、Aは直ぐに戻ってきた。
『私、日本に帰る』
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作者名:まり | 作成日時:2019年10月15日 1時