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『幻かと思った。
半年前と同じようなシチュエーションだったから』
半年前とほぼ変わらないマンション。
懐かしくて大好きな匂い。
ソファに身体を預けて、思いっきり息を吸い込んだ。
出かけた帰りに偶然俺を見かけて慌てて車を停めた、という言葉通り、目の前の車道にはいつの間にか見覚えのある車が停まっていて、すぐさま壊れたキャリーを後部座席に積んでAのマンションまでやってきた。
Aは俺のこと受け入れてくれた。
それだけで、日本に帰ってからの俺の苦悩なんて全部吹っ飛んだ。
「Aも早くこっち来てよ」
ソファの空いた半分をポンポン叩いて促すと、
『もう少し待って？』
キッチンでお湯を沸かしていたAは苦笑いした。
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「どう？仕事は順調？」
『うん…祐也は？』
「俺はつい先週までツアーで、ずーっと忙しかった」
『そうなんだ』
ついさっきまで半年間も音信不通だったとは思えないほど、何気無い会話を交わしていた。
これも大好きだった、相変わらずサラサラの髪の毛を指で梳く。
何気ない幸せをかみしめていた。
半分眠りかけていたのか疲れがあったのか、少しぼーっとしてたらしい。
一瞬ここが東京で、明日は二人ともここから仕事に行って、これから毎日こうやって一緒に過ごして…
夢だか錯覚だかよくわかんない、そんな事が頭の中を占領していた。
『ねぇ、祐也』
真剣味を帯びたAの声で、急に現実に引き戻された。
「ん？どうした？」
だいぶ深くもたれかかっていた身体を少し起こす。
『どうして怒んないの？
ずっと音信不通だったんだよ？
祐也が会社に電話してきてくれた時だって、出なかったのに。
それなのになんでまた会いに来てくれて、普通に優しくしてくれるの？』
「A…」
Aを腕の中に閉じ込める。
「Aはさ、今も俺の事好きでいてくれてるんだよね？」
『うん』
だよな。
これで、好きじゃないとか言われたら人間不信になりそうだわ。
「俺もAが大好き。
今のAからの質問、それが全てでしょ。
半年間連絡とれなかったけど、それでも大好きだからここまでまた会いに来た」
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作者名：まり
| 作成日時：2019年10月15日 1時
